[M&Aスクランブル]

(2016/06/22)

『攻めのガバナンス』とM&Aリテラシー

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 最近のM&Aの現場では、「コーポレートガバナンス・コード(CGC)」の本格適用(2015年6月1日)によって、以前に比べてM&A実務がやりやすくなったとする会社がある一方で、やりにくくなったという話も聞こえてくる。その典型例は、「社外取締役が重箱の隅をつつくような指摘をすることが以前より多くなり、その対応で案件がなかなか進まなくなった」「意思決定が滞り社長も困ってしまって、結局見送りになってしまった」などで、『攻めのガバナンス』どころか、『守りのガバナンス』改革だという嘆きさえ聞こえる。本稿では、この正反対の見方について、企業のM&Aリテラシーの観点から考えてみたい。

 ところで、『攻めのガバナンス』とはそもそも何か。

 CGC本文に『攻めのガバナンス』という言葉は見当たらないが、CGC適用に先立って「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」が公表した「コーポレートガナナンス・コード原案」の序文の「本コード(原案)の目的」の項には、この『攻め』についての具体的な説明がある。少し長いが、改めて確認してみたい。

 

 

「コーポレートガバナンス・コード原案」序文

 

コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議
2015年3月5日

(略)

本コード(原案)の目的

6. 本コード(原案)は、「『日本再興戦略』改訂2014」に基づき、我が国の成長戦略の一環として策定されるものである。冒頭に掲げたように、本コード(原案)において、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味しており、こうした認識の下、本コード(原案)には、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を盛り込んでいる。(略)

7. 会社は、株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじめ、様々なステークホルダーに対する責務を負っていることを認識して運営されることが重要である。本コード(原案)は、こうした責務に関する説明責任を果たすことを含め会社の意思決定の透明性・公正性を担保しつつ、これを前提とした会社の迅速・果断な意思決定を促すことを通じて、いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すものである。本コード(原案)では、会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面を過度に強調するのではなく、むしろ健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼を置いている。

 本コード(原案)には、株主に対する受託者責任やステークホルダーに対する責務を踏まえ、一定の規律を求める記載が含まれているが、これらを会社の事業活動に対する制約と捉えることは適切ではない。むしろ、仮に、会社においてガバナンスに関する機能が十分に働かないような状況が生じれば、経営の意思決定過程の合理性が確保されなくなり、経営陣が、結果責任を問われることを懸念して、自ずとリスク回避的な方向に偏るおそれもある。こうした状況の発生こそが会社としての果断な意思決定や事業活動に対する阻害要因となるものであり、本コード(原案)では、会社に対してガバナンスに関する適切な規律を求めることにより、経営陣をこうした制約から解放し、健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えることを狙いとしている。

(以下略)

 


 これを要約すると・・・

 

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