[M&A戦略と法務]

2016年2月特大号 256号

(2016/01/15)

TPP成立を踏まえた貿易上の諸論点とM&A

~アンチダンピングと輸出管理を中心として~

 内海 英博(TMI総合法律事務所 パートナー 日本国及びNY州弁護士/日本国及び米国公認会計士)
  • A,B,EXコース

1. はじめに

  近年日本企業の進出が顕著なアジア、南米等の当局は、現地に輸入される物品に対して高額のアンチダンピング関税を賦課することに積極的である。現在日本はTPP (環太平洋戦略的経済連携協定)の交渉を終え、各国の批准を待っている状況だが、TPPが正式に発効すると加盟国間では関税がほぼなくなるため、関税を不当な貿易への歯止めとして使うことは難しくなり、対抗策としてアンチダンピング関税の重要性がより増すことになる。また、インド、インドネシア、中国、ブラジルといった多くのアンチダンピング課税に積極的な国々は、TPPの交渉参加国ではないため、従前のとおり、WTO法の手続に従ったアンチダンピング措置がそのまま採られることになる。

  海外当局は、自ら行う利害関係者への調査結果に基づき、課税の判断をした場合には、高額の関税を5年間又はそれ以上の期間課すこととなる。そのため、一度課税の判断がなされれば当該商流の中止を余儀なくされることも多いと思われる。従って、この問題は、当該商流の源となるメーカーのみならず、商社、現地で商品を購入している日本企業の関連会社にとっても極めて大きな影響を及ぼすものとなる。従って、M&Aにおいても対象企業がアンチダンピング関税を課されているのか、あるいは課されるリスクがないか等につき綿密な調査が求められる。また、このようなアンチダンピング関税対応には会計・原価計算の知識が必要不可欠である。

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