[M&Aスクランブル]

(2009/07/15)

[潜望鏡] 護送船団資本主義の復活

編集長川端久雄
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船団率いる経済産業省

百年に一度の経済危機との掛け声のもと、金融機関だけでなく、資金繰りに窮した大企業を救済するため公的資金を資本注入する制度が日本でスタートしました。
今回の金融・経済危機の発信源となった米国では、一足先にGMなど自動車業界で一時国有化が行われています。M&Aの視点からは、どちらも国家によるM&Aととらえることが出来ますが、決定的に違う点があります。米国は連邦破産法11条の申請による破綻処理に伴うものです。一定の要件を満たす必要があるとはいえ、日本のように生きたままの一般企業に資本注入をするのは異例の措置です。
今回の措置は経済産業省が立案をする産業再生法の改正により可能となりました。同省が所管する半導体・電機業界には、構造改革の遅れに経済危機が重なり、苦境に陥っている企業が多いこともあって、マスコミで同法は、「電機業界救済法」とも揶揄されていますが、対象業種は、同省だけでなく他省庁が所管する全業種を含みます。厚生労働省所管の医薬品製造業、警察庁所管の警備業なども対象です。経産省には、産業・企業の制度のインフラ部分は、業種横断的に政策を立案する責務があるからだそうです。
いち早く再編に取り組み、自主努力で危機に対応している業界や企業にとっては要らぬおせっかいですが、そういうところも含め、制度としては全産業にいざというときに国のセーフティーネットがかけられたわけです。国民が失業や病気になったときのセーフティーネットは穴だらけなのに大企業には随分手厚いなと思いたくもなりますが、本論に戻れば、政府の産業政策上、重要な位置づけにある企業はつぶさないという決意表明ともいえます。官僚が経済システムを主導した護送船団資本主義ニッポンの復活のように思えてなりません。金融立国でなく製造業が日本経済を引っ張るという日本型資本主義への回帰といえそうです。
もっとも、船団を率いる省庁は経産省に交替しています。戦後復興からバブル経済崩壊まで船団を率いたのは銀行を監督する大蔵省でした。

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