[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2019年2月号 292号

(2019/01/18)

第166回 食品・農林水産業界~老舗を巡るM&Aと投資ファンドによる中堅中小企業への支援によりIN-INの件数は高水準

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
1. IN-IN増加の要因

 図表1は食品・農林水産業界(以下「食品業界」という)のM&A件数の推移である。2014年に大きく増加してから年130~140件で推移している。2014年の増加はIN-INが増えたことによるものであり、その後も高水準を継続している。

(図表1)食品・農林水産業界M&A件数推移~買い手または売り手が食品・農林水産業界に属する件数

 筆者が2013年と2018年1~11月のIN-INを個別に確認したところ、事業承継解決目的のM&A(以下「事業承継M&A」という)の件数が6件から26件、また、投資ファンド(文末※1参照)買い手のM&A件数が13件から28件に増加していた。(ただし、2018年は事業承継M&Aと投資ファンド買い手のM&Aの間に3件重複があった。)

 図表1のグラフ上に記載しているように、この間のIN-INの件数は67件から112件になり45件増加しているが、増加分のうち事業承継M&Aと投資ファンド買い手のM&Aの増加件数によるものは、重複する3件を除き計32件で約7割を占めている。

 以下、本稿では食品業界でIN-IN件数の水準が高い要因の一つとなっている事業承継M&Aと投資ファンド買い手のM&Aに焦点をあて、最近(2017年~18年)の事例を振り返ってみた。

 なお、ここでは事業承継M&Aをレコフデータが公開情報から収集している「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」と定義している。事業承継M&Aは中堅中小企業に関わる案件が多く公開されないケースが多いため、実際の件数はもっと大きなものである。


2. 事業承継M&Aの例

 事業承継M&Aを個別にみていくと、老舗同士のM&Aや老舗及び地元ブランドを有する企業を対象とするM&Aが目立つ。

 例えば1877年創業で

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