[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2020年12月号 314号

(2020/11/16)

第188回 空調・衛生設備工事業界~M&Aで事業を拡大・強化してきた高砂熱学工業と大気社

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
  • A,B,EXコース
1. はじめに

 国土交通省は建設工事施工統計調査報告(文末※1参照)を通じて、毎年、管工事業に関わる統計を発表している。ここで管工事業とは、「冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と定義されている。空気調和設備や給排水衛生設備工事を行っている空調・衛生設備工事業と同様の意味である(以下では便宜上、同報告の管工事業を空調・衛生設備工事業とした)。

 図表1は同報告に含められた空調・衛生設備工事業における資本金別法人数の割合である。これをみると資本金1億円以上が2.6%にとどまっており、同業界では中堅・中小企業の占める割合の大きいことが分かる。

 一方で、売上高が1000億円を上回る企業も数社存在している(図表2参照)。筆者が調べたところ、この中で比較的M&Aを積極的に行ってきた企業は大手上場2社の高砂熱学工業と大気社だ。本稿ではこの2社を中心に、空調・衛生設備工事業界のM&A動向について述べてみたい。


2. 高砂熱学工業のM&A動向
 
 売上高業界首位の高砂熱学工業は、1923年に旧高砂工業煖房工事部の権利義務を継承して設立された。国内で拠点を拡大するとともに1960〜1980年代、世界貿易センター、新大阪万国博覧会会場、東京ドームなどの空調設備工事を施工した。1974年にはシンガポールに進出。その後、アジアを中心に拠点を拡大し直近(2020年3月期)の海外売上比率は14.9%という水準である。

 同社は2012年より本格的にM&Aを手がけ始めた(図表3参照)。

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