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[M&A戦略と法務]

2020年8月号 310号

(2020/07/15)

日本企業によるクロスボーダーM&A・組織再編と税務調査・税務争訟

吉岡 博之(TMI総合法律事務所 弁護士)
 日本企業によるM&Aの実施件数が増加する中、M&A・組織再編に関する税務調査・税務争訟事例も多く生じている。特に、近年日本企業は、外国企業の買収を積極的に進めており、また、クロスボーダーの組織再編も多く行っているが、税務上留意すべき点も多く、税務調査や税務争訟に至っている事例も多い。

 以下では、日本企業によるクロスボーダーM&A・組織再編に関して、(1)外国企業の株式取得、(2)外国子会社への事業移転、(3)外国子会社の組織再編及び(4)外国子会社の株式譲渡のそれぞれの場面において、日本で生じた近時の税務調査及び税務争訟事例を踏まえ、特に留意すべき点について解説したい。


第1 外国企業の株式取得 ~タックスヘイブン対策税制の適用~

 外国企業の株式を取得して子会社化する場合に、日本の税法の観点から留意すべき点はいくつかあるが、その中でも外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)には特に留意が必要であると考えられる。

1 外国子会社合算税制の概要

 外国子会社合算税制とは、一定の条件に該当する外国子会社等の所得を日本の親会社等の所得と合算して、日本で課税する制度である。2017年度税制改正で、大幅な制度の改正がなされた。

 外国子会社合算税制は、居住者又は内国法人が外国関係会社の発行済株式等の10%以上を保有している場合又は実質支配している場合等において、原則としてかかる持分割合に応じて合算課税を行うものである。ここで、外国関係会社とは、居住者・内国法人等により発行済株式等の50%超を直接及び間接に保有されている外国法人並びに居住者・内国法人との間に実質支配関係がある外国法人をいう。

 合算される所得の範囲は、外国関係会社の種類により異なる。ペーパーカンパニー等の特定外国関係会社については、会社の所得全体について一定の調整を加えた上で、合算課税の対象となる。もっとも、当該外国関係会社の租税負担割合が30%以上となる場合には、合算課税はなされない。

 特定外国関係会社以外の外国関係会社のうち、経済活動基準の全部又は一部を満たさない会社は、対象外国関係会社に該当し、やはりその所得のすべてが、一定の調整を加えた上で合算課税の対象となる。但し、租税負担割合が20%以上となる場合には、合算課税はなされない。ここで、経済活動基準とは、以下の4つの基準をいう。

(1)事業基準
(2)実体基準
(3)管理支配基準
(4)所在地国基準又は関連者基準

 他方、特定外国関係会社以外の外国関係会社のうち、経済活動基準のすべてを満たす会社は部分対象外国関係会社とされ、一定の利子、配当、無形資産の使用料等の受動的所得のみ合算課税の対象となる。但し、租税負担割合が20%以上となる場合には、やはり合算課税はなされない。

2 事例

 近年、外国企業を買収した後に外国子会社合算税制に基づく課税がなされた事例として、S社の事例がある。S社は、2013年に米国のA社を、2014年に米国のB社を買収した。報道によると、買収の対象となった2社は、買収前から、税の負担が軽いバミューダ諸島にそれぞれ子会社を持ち、事業目的で支出した保険料の一部がかかる子会社に入る仕組みにして利益を上げさせていた(注1)。

 2018年、東京国税局は、かかるバミューダ子会社は、実質的な事業活動をしていないペーパー会社であって、外国子会社合算税制の対象となると認定し、当該子会社の所得を最終的な親会社であるS社の所得に合算するべきだと指摘した。また、B社のシンガポール子会社も、関連会社以外との取引が少ないことから同税制の対象に認定したとされている(注2)。合算対象となった所得は計約747億円に上ったが、合算された所得の大部分は、過去のS社の繰越欠損金と相殺されたため、追徴税額は約37億円にとどまったという。なお、S社によれば、かかる申告漏れは、買収後に数百社ある子会社の所得の適時の把握ができていなかったために生じたとのことであり、意図的な課税逃れではないと判断され、重加算税は課税されなかった。

3 留意点

 外国企業の株式を譲り受ける場合、

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