[M&A戦略と法務]

2013年9月号 227号

(2013/08/15)

M&Aにおける不動産

 三好 啓信(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1. はじめに-不動産の重要性

  企業が保有する資産の中で、不動産は高いウェートを占めている。特にディベロッパー、ホテル、ゴルフ場等の業種の場合には総資産に占める不動産の割合が一般的に高いと考えられるが、その他の業種においても自社ビル、工場、社宅、保養所等の不動産を所有する例は多い。

    企業が取得してから相当期間経過した不動産については、その取得後の経済情勢の変動その他種々の理由により、貸借対照表上の簿価と適正な評価を行って把握される時価との間に大きな差を生じ、多額の含み損益が発生しているケースがある。

    M&Aにおいては、企業価値評価において時価純資産法で不動産時価評価が求められることが多い。時価純資産法は、帳簿上の資産・負債を時価に評価替えして実体純資産を把握する評価方法であるが、ここで洗い出された含み損益はM&Aにおける買収価格に影響を及ぼすのみならず、M&Aに伴う課税の対象となり又はこれに影響を及ぼすことがあるのでその主な点を概観することとする。(注1)

2. 合併

  法人が合併したときは、被合併法人が所有していた不動産等の資産はすべて合併法人に移転することとなる。不動産については合併による移転登記を行うこととなるが、登録免許税は1000分の4、不動産取得税は非課税とされる。

   法人が合併した場合には、被合併法人がその資産及び負債(以下「資産等」という)を合併法人に時価で譲渡したものとして譲渡益・譲渡損を認識し、それを被合併法人の最後事業年度(合併の日の前日の属する事業年度)の益金・損金に算入して、その年度の所得を計算すべきこと(法人税法第62条第1項及び第2項)、合併法人から被合併法人の株主等に交付される合併法人の新株その他の資産は、被合併法人が合併法人から時価で取得し、直ちにその株主に交付したものとされること(同条1項後段)が原則とされる。即ち、合併においては、被合併法人に譲渡損益が生じ、また被合併法人の株主にはみなし配当課税が行われる(所得税法第25条第1項第1号)のが原則となる。

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