[M&A戦略と法務]

2014年9月号 239号

(2014/08/15)

株主間契約において留意すべき条項~相手方が個人である場合を中心に~

 淵邊 善彦(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士)
 堀木 淳也(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1.はじめに

  企業買収の際に対象会社の発行済株式の全部を取得せずに少数株主が残る場合や、合弁会社を新たに設立する場合には、複数の株主の間で株主間契約が結ばれることが一般的である。企業買収においては、対象会社の発行済株式をすべて取得できれば、対象会社を自由に運営できるが、①リスク限定の観点から投下資本を限定するために、発行済株式の全部を取得しない場合や、②株主が対象会社の事業上重要な役割を果たしているため対象会社と当該株主との間の関係を維持する場合などは、少数株主が残ることがある。また、合弁会社においては、その経営や事業遂行に発言権を持ちたい複数の株主が存在するのが通常である。合弁事業という場合、通常は合弁会社が行う事業をいうが、本稿では企業買収後の共同事業についても合弁事業と呼ぶこととする。

  合弁事業においては、少数株主の立場からは、多数株主が対象会社の運営を常に単独で決定することを防ぐため、対象会社の組織や事業等の運営について事前に合意しておく要請が高い。そのため、多数株主と少数株主間で株主間契約が締結されることになる。

  株主間契約の相手方が法人であれば、倒産リスク等を除き、通常は相手方の存続に問題が生じる可能性は低いといえる。しかし、株主間契約の相手方が個人である場合には、個人であることに起因する特有の問題点を検討する必要がある。

  近年、オーナー企業経営者の高齢化が進んだため、事業承継税制の適用要件が緩和されるなど、事業承継の基盤は整いつつある。このような状況下では、同族経営企業の代替わりにより、相手方との契約関係がその相続人に承継される現実的な可能性を考慮する要請が高いといえる。そのため、相手方に相続が発生する可能性を考慮したうえで、株主間契約の内容を検討することが必要になる。

  そこで、本稿では、株主間契約に規定される主だった条項のうち、契約の相手方が個人である場合に問題になる条項について概観したうえで、個人の場合特有の留意点について検討することとしたい。なお、本稿で検討する対象会社は、非公開会社であることを前提とする。
 

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