[M&A戦略と法務]

2014年10月号 240号

(2014/09/15)

事業再生におけるM&Aの留意点(否認権行使リスクの回避について)

 佐藤 真太郎(TMI総合法律事務所 弁護士)
 松永 耕明(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

第1 はじめに

  近年、M&Aを通じて事業再生を図る事例が多数見受けられる。支払不能や債務超過となるおそれのある会社であったとしても、例えば採算性のある事業を事業譲渡や会社分割により切り出して存続させること等により当該事業の再生を目指すことは実務上多数行われているものであり、事業の存続・再生が実現できればそれは事業再生の一つの成功例として位置づけられ得るものである。

  しかしながら、支払不能や債務超過となるおそれがある会社を対象とするM&Aにおいては、後述する否認権行使リスクが常に付きまとうことになる。当該M&Aが相当な対価の支払いによって実行された場合であれば、理論上、否認権行使リスクは回避できるといえるが、一方でM&Aの当事者が相当な対価であると認識していたとしても、法的倒産手続に移行した場合に管財人等との認識の相違により管財人等に否認権を行使される可能性は否定できない(注1)。近年、破産手続開始決定前に事業再生目的でなされたM&Aが、相当な対価によりなされたものではないこと等を理由に破産管財人等によって否認され、M&Aにおける買受人が多額の金銭支払を余儀なくされた事例も複数見受けられるところであり、否認権の行使をいかに回避しつつ、事業再生に向けたM&Aを実現できるかという点は、事業再生のためのM&Aにおいて必須の視点であると考えられるため、本稿では、上記テーマを取り上げる。

  なお、事業再生のためのM&Aとしては「事業」の譲渡を行う事業譲渡型M&Aと、「会社」自体の譲渡を行う承継型M&Aがある。前者の例としては事業譲渡及び会社分割が、後者の例としては減増資、合併及び株式交換・株式移転が挙げられるところ、本稿では実務上、特に否認権行使の対象となり得る事業譲渡型M&Aとしての事業譲渡を行う場面を中心に、否認権リスク回避の方法について検討することとする。
 

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