[M&A戦略と法務]

2015年5月号 247号

(2015/04/14)

米国における買収スキーム ~デラウェア州会社法251条(h)を利用する二段階合併~

 高野 大滋郎(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

第1 はじめに

  昨今の円安による買収コストの増加傾向にもかかわらず、2014年の日本企業による海外企業のM&Aは過去最多の557件を記録した。地域別の件数ではアジアが最多であるが、次いで多いのは北米であり、また、規模でみると、サントリーホールディングスによるアメリカの酒造メーカー「ビーム」の約1兆6700億円の買収が最大で、これに次ぐのが第一生命によるアメリカの保険会社「プロアクティブ ライフ コーポレーション」の約5800億円の買収である。これらに加えて、大塚製薬ホールディングスによるアメリカのバイオベンチャー「アバニア ファーマシューティカルズ インク」の約4200億円の買収もあり、依然として海外企業のM&Aの中で、米国企業の買収が大きなウェイトを占めていることは間違いない。

  日本企業が米国企業を買収するにあたっての基本的な手順、すなわち、対象会社との間での秘密保持契約の締結に始まり、MOU(memorandum of understanding)やLOI(Letter of Intent)などを締結した後、対象会社のデュー・ディリジェンスを経て、最終的に買収契約を締結し、会社法その他の必要な法的手続きを経て買収を完了するというプロセス自体は、基本的には日本企業同士の買収の場合と異なることはない。

  しかしながら、米国企業の買収には、準拠する州法および連邦法が適用されるため、法的手続きの面で、日本法と異なる点も多く存在する。そのため、M&Aに適用される米国法の概要、採り得るスキームと、基本的なタイムラインを理解しておくことは、米国企業の買収を検討するにあたって有益と思われる。

  そこで、本稿では、2013年8月1日に新設・施行され、その後米国で広く利用されているデラウェア州会社法(Delaware General Corporation Law, 「DGCL」)251条(h)を踏まえて、日本企業がデラウェア州法準拠(注1)の米国の上場企業を買収し、完全子会社化する際に採り得るスキームを概説する。

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