[M&A戦略と法務]

2015年6月号 248号

(2015/05/20)

日本における表明保証に係る裁判例の傾向・分析と保険活用の可能性

 淵邊 善彦(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士)
 中村 謙太(TMI総合法律事務所 弁護士)
 田中 健太郎(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1 はじめに

  表明保証とは、一般に、契約当事者の一方が、他方の当事者に対し、自らの能力・状況や契約の目的物等に関連する一定の事項が一定の時点において真実かつ正確であることを表明し、その表明した内容を保証するものをいう。表明保証は、元々は欧米での契約実務において用いられてきたが、日本国内のM&A取引に係る契約、シンジケートローン契約、不動産受益権売買契約等の契約においても盛り込まれることが多くなってきており、契約交渉上の重要論点となることも多い。

  日本国内では、表明保証条項に係る紛争が裁判所に持ち込まれるケースは限られており、この点に関する十分な裁判例が存在するとまでは言えないのが現状である。本稿では、表明保証条項に関する主な論点を整理した上で、これまでに表明保証に関する判断を示した裁判例を踏まえて若干の考察を加え、表明保証保険の活用可能性を検討することとしたい(注1)。

2 表明保証の基本的な内容
(1) 表明保証の機能


  実務上、表明保証の主たる機能は、リスク分配機能であると考えられるところ(注2)、後述の裁判例一覧(以下「裁判例一覧」という。)記載の東京地判平成25年11月19日公刊物未登載(裁判例一覧No.18)では、「表明保証の機能には、リスク分配機能があり、表明保証をした契約当事者は、表明保証をした事実については責任を負う一方、それ以外の事実については責任を負わないとすることにより、契約当事者の責任を明確にする機能があること…」と判示している。また、東京地判平成26年1月21日公刊物未登載(裁判例一覧No.19)でも、「表明保証条項の機能が契約当事者間の公平なリスクの分配にあることに照らせば…」と判示しており、表明保証のリスク分配機能を正面から肯定する裁判例も存在するところである(注3)。

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