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[M&A戦略と法務]

2017年6月号 272号

(2017/05/18)

事業承継M&Aにおける法務デューデリジェンスの留意点

 上田 円(TMI総合法律事務所 弁護士)

1.はじめに

  平成20年10月1日に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が施行されるなど、近年、中小企業を中心として事業承継が大きな課題となっている。

  中小企業庁から平成28年12月5日に「事業承継ガイドライン」が公表されており(注1)、そのガイドラインにおいても、社外への引継ぎとしてM&Aによる事業承継の手法等が紹介されているように(注2)、親族内の後継者不足等の理由から事業承継を目的としたM&Aが実施されることも多い。

  事業承継ガイドラインにおいてもM&Aの手法としていくつかのスキームが紹介されているが、実務上、利用頻度が最も高い手法は株式譲渡であり、ときに会社分割又は事業譲渡による第三者への事業承継が行われることもある。

  会社分割又は事業譲渡による事業承継の場合、偶発債務を遮断し得るというメリットがある一方で、会社分割については、会社法等の法令に基づく手続の実施に手間や時間を要するというデメリットがある。また、事業譲渡の場合には、会社分割と同様のメリットがある一方で、承継する契約等のすべてについて、相手方の個別同意を得なければならないことから、取引先の数が多い場合には同意取得に時間を要することや許認可事業の場合には基本的に許認可を取得し直す必要があるといったデメリットがある(なお、会社分割の場合の許認可の承継の可否は適用法令により異なる)。

  これに対して、株式譲渡は、偶発債務等を遮断できないという点はデメリットとなり得るものの、株主の変動が生じるのみであることから、事業運営に与える影響が少なく、また、会社分割や事業譲渡と比較すると、手続が比較的簡便であるというメリットがある。

  最終的なスキームの選択は、会計・税務面のメリット・デメリット等も考慮した上で行うこととなるが、本稿では、事業承継M&Aにおいて、もっともオーソドックスな手法といえる株式譲渡によるM&Aの法務デューデリジェンス(以下「DD」という)の実務上の留意点について述べることとする。

2.DDの留意点

  DDは、大きく分けて、書類の確認、質問リストによる質問と回答のやりとり、オーナー及び担当役職員に対するインタビューの実施の3つの作業を中心として行われる。

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