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[ポストM&A戦略]

2017年4月号 270号

(2017/03/15)

第100回 レポーティングラインと可視化ライン

 竹田 年朗(マーサー ジャパン グローバルM&Aコンサルティング パートナー)

  クロスボーダーM&Aの場合は、当面あるいはその後の期間も、買収先経営トップの経営手腕に大きく期待するケースは少なくない。しかし、時としてその肝心の買収先経営トップのコントロール(ガバナンス)に苦慮する例もあるようだ。リテンション時のコミュニケーションや、クロージング後からのガバナンス確立の取り組みにその原因があるものと思われるが、今回は、そのような状況の打開策としてまず検討する価値の高い、買収先オペレーションの可視化について、レポーティング(経営報告)との対比をしながら解説する。

いうことを聞かない買収先経営トップは悩みのタネ

  日本企業の行うクロスボーダーM&Aにおいては、同じパターンの買収の繰り返しなど一部のケースを除き、買収成立後速やかに買い手の既存組織と買収先を分解・再編して指揮命令系統を一本化する、いわゆる組織統合に踏み込む例はまだまだ少ない。統合の阻害要因を克服し、組織統合への道筋をつけるのには、いくらかの時間を要するからである(本連載第79回「PMI再考:海外買収先のグループ統合(下)」参照)。
  それでは、組織統合が行われるまでの間、買収先は買い手組織の中でどのように位置づけられているかというと、買収前の一体的な組織を維持し、買収先の経営トップが買い手の方針のもとに経営して、その結果を買い手の上長に対して経営報告を行い、さらに上長から指示命令を受ける、という建て付けとなろう。この考え方自体は理にかなっており、原理的に効率も良い。その目指すところは、組織的にはいまだ別建てで完全に一体ではないが、買い手の経営の仕組みや意思決定のプロセスに買収先をしっかりと統合し、経営的に一枚岩の状態を作り上げること、すなわち「経営統合」である。これにより、現時点で組織統合をしていなくても、あるいはそれが望めなくても、組織統合に近い状況を実現する主旨である。
  しかし日本企業の行う海外企業買収における典型的な問題は、1) 本来組織統合すべきケースにおいて、いつまでもこのような買収先経営トップを経由した間接統治、あるいは買い手と買収先の「二人三脚」といった競争上不利な組織構造をとり続けること、あるいはそもそも論として、2) 買収先経営トップに睨みを利かせられず、ともすると好き勝手をされてしまうことであろう。言うまでもなく、2) は経営者コントロール(ガバナンス)の失敗の問題であり、1) の組織統合が一向に進まない原因でもあることに注意が必要である。
  さて、前回連載で、買収先経営トップと買い手上長とのレポーティング関係について解説した。その根底には、買い手上長が買収先経営トップの任免に及ぶ絶大な力を持っている、という秩序観があり、だからこそ買収先トップはその上長にお仕えする以上は全力でコミットし、それに対して応分の応対を求める「他者の排除(Exclusion of Others)」の感覚を持つ、と述べた(本連載第99回「買収先経営トップのレポーティングライン」参照)。

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