[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2022年6月号 332号

(2022/05/13)

【KKRの担当者が語る】会計ソフト会社「弥生」の成長戦略

  • A,B,EXコース
谷田川 英治氏

谷田川 英治(やたがわ・えいじ)KKR プライベート・エクイティ パートナー

東京大学工学部にて学士号、東京大学工学系研究科にて修士号取得。
ゴールドマン・サックス投資銀行部門でニューヨーク及び東京で勤務し、テクノロジー、メディア、テレコム業界担当、M&Aや資金調達などの案件に関与。2006年にKKR入社。テクノロジー業界チームのメンバー。KKR入社後はUnisteel、インテリジェンス、パナソニック ヘルスケア、Pioneer DJ、Transphorm、カルソニックカンセイ、日立工機、日立国際電気、フロムスクラッチ、西友、ネットスターズの投資に関与。現在工機ホールディングス(旧日立工機)、SYホールディングス(西友)、Transphorm(米国企業)、データX(旧フロムスクラッチ)、ネットスターズにおいて社外取締役を務める。2010年から2012年まで香港オフィス勤務。

圧倒的なリーディングカンパニー

 2022年3月、グローバル投資会社のKKRがオリックスから会計ソフト会社の弥生を買収した。金額は非開示とされているが、約2400億円とみられている。

 弥生は、もともと米会計ソフト会社インテュイットの子会社だったが、2003年にPEファンドのアドバンテッジパートナーズの支援でMBOによって独立。その後、2004年にライブドアグループによって230億円で買収され、2007年にはMBKパートナーズが710億円で買収、さらに2014年に約800億円でオリックスの傘下に入った。

 オリックス傘下となった当時の弥生の14年9月期の売上高は162億円。主力商品である「弥生シリーズ」は約125万社の小規模事業者のユーザーを持ち、小規模事業者の4割のシェアを占めていた。それが、21年9月期には売上高211億円、経常利益49億円となり、クラウド会計ソフト利用者6年連続No.1、デスクトップ業務ソフト売上実績22年連続No.1を獲得、登録ユーザー数も250万を超えて国内小規模事業者向けソフトウェアサービス市場における圧倒的なリーディングカンパニーとなった。ちなみに、ライバル企業である上場2社、マネーフォワードの2021年11月期の売上高は156億円、経常利益-10億円、freeeの2021年6月期の売上高は102億円、経常利益は-27億円となっている。

 オリックスが業績好調な弥生の売却に踏み切った背景には、本業のリース事業の収益が下がるなか、軸足を再生可能エネルギーなどの成長分野に移していることがあると見られる。

 一方、弥生を買収したKKRは米国、オーストラリア、ノルウェー、ベトナムなど海外で複数の業務関連ソフト開発会社への投資実績を持っており、日本でも2019年にIT系のスタートアップのデータX(旧フロムスクラッチ)に投資するなど、グローバルに豊富な投資実績を持っている。

 弥生を2400億円という巨額で買収したKKRは弥生の成長戦略をどう描いているのか。本件を担当した谷田川英治プライベート・エクイティ、パートナーに聞いた。

<インタビュー>
弥生の新たな成長ステージを支援~クラウド化の加速と業界再編の牽引~

 谷田川 英治(KKR プライベート・エクイティ パートナー)

ビットで行われた弥生の買収

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