[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2014年8月号 238号

(2014/07/15)

マクロミル―― 創業社長としてではなく、プロの経営者としてベインキャピタルと組んで企業成長に取り組む杉本哲哉の“覚悟”

  • A,B,EXコース

杉本 哲哉(マクロミル 社長)

米系PEファンドの傘下に

  インターネットリサーチ大手で東京証券取引所1部上場のマクロミルが、米系プライベートエクイティ(PE)ファンドのベインキャピタル・アジア・LLC(通称 ベインキャピタル・ジャパン)によるTOBによって2014年4月上場廃止となり、同ファンドのもとで新たなスタートを切った。

  同社の13年6月期の連結売上高は171.2億円、営業利益38.3億円、経常利益39.5億円、当期純利益25.1億円で、前年度に比較して売上高は20.3%増、営業利益24.5%増と大幅増収増益で業績は順調だった。それだけに、なぜ外資系ファンドの傘下に入らなければならなかったのかに関心が集まった。

  マクロミルは00年1月、インターネットを利用した調査事業を目的に「マクロミル・ドット・コム」として設立された。WEB調査票の作成、調査対象者抽出、依頼メール配信、実査(回答データ収集)、リアルタイム集計、納品データ生成に至るまでの一連の工程をWEB上で簡易に行うことを可能とした自動インターネットリサーチシステム(Automatic Internet Research system:AIRs)を独自開発し、郵送調査や訪問調査に代表される従来型の調査手法と比較してより安価でスピーディなマーケティングリサーチ・サービスの提供を行うことで幅広い顧客のニーズに応えるとともに、マーケティングリサーチに対する潜在的な需要を喚起し、創業わずか4年弱の04年1月に東証マザーズ市場に株式を上場、さらに翌05年4月には東証第一部へ指定替えした。M&Aにも積極的で、10年にはヤフーのリサーチ部門を経営統合、そして13年には電通グループ会社の電通マーケティングインサイト(現・電通マクロミルインサイト)を買収するなどして事業を順調に拡大してきた。世界のマーケティングリサーチ会社のランキングを公表している「Honomichl Top25」では、インターネットリサーチを主たる事業内容とする国内のマーケティングリサーチ会社の中で、現在に至るまで売上高で第1位を継続するなど業界のリーディングカンパニーとしての地位を築いている。また、同社の杉本哲哉社長は創業ベンチャー国民フォーラム(中小企業庁委託事業)の「Japan Venture Award 2004」中小企業庁長官表彰やアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(EOY)2005日本代表も受賞している。

  一方、マクロミルを買収したベインキャピタルは、全世界で総額700億ドルを越える運用資産を持つ国際的PEファンドで、06年に東京拠点を開設。事業会社・コンサルティング会社での豊富な経験を持つプロフェッショナルが中心となって、一般的な投資会社が提供する資本・財務的支援にとどまらず、事業運営を現場レベルで支援することで投資先企業の価値向上を実現してきた。日本ではジュピターショップチャンネル、すかいらーく、ドミノピザ・ジャパン、ベルシステム24など7社に対する投資実績を持っている。

「私は今後の当社の成長戦略について、スピード感を持って進めていくためには株式の非公開化が必要だと考えました。その場合、MBO(Management Buy Out)という手段もあったのではないかと言われます。しかし、自分の持株を高く売って、その後、新生会社の株式に安価で投資し大株主としての影響力を行使するというのは、私の経営者としての美学にはなかったのです」と杉本社長は話す。
 

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