[マールレポート ~企業ケーススタディ~]
2015年11月号 253号
(2015/10/15)
立志伝中の人物
新潟県南魚沼市に本社を構えるキノコの生産販売大手「雪国まいたけ」は、米系プライベートエクイティ・ファンド運営会社「ベインキャピタル」が運営するファンドが設立した「BCJ–22」によるTOBと、その後のスクイーズアウトで完全子会社化され、2015年6月東京証券取引所第2部の上場を廃止された。
同社を創業したのは、大平喜信(おおだいら・よしのぶ)氏。1948年2月新潟県生まれ。六日町立五十沢中学校を卒業後、電機部品メーカー勤務などを経て、75年「大平もやし店」を創業。83年には3人の実弟(若井猛氏、大平安夫氏、大平正夫氏)と雪国まいたけを設立し、舞茸(まいたけ)の人工大量生産に成功して年商約300億円企業にまで成長させ、2000年には東証第2部に上場を果たした。92年には社団法人ニュービジネス協議会からアントレプレナー大賞部門の最優秀賞を受けるなど、立志伝中の人物である。
TOBに対しては、大平氏など創業家は当初から賛成していたわけではなかった。同社のメインバンクである第四銀行を中心とする複数の取引銀行が同社のコーポレート・ガバナンス、業績悪化に危機感を抱き、大平氏及び資産管理会社・大平商事への貸付債権の担保であった同社株を、担保権を実行して取得した上、TOBに応じたことが決め手となったという珍しいケースである。前例のない今回のTOB劇はなぜ起こったのか。
この雪国まいたけのTOBについては、齋藤達弘新潟大学教授が「雪国まいたけのTOBとコーポレート・ガバナンス」と題した論文において詳細な分析を行っているので、詳しくはこの論文をお読みいただきたい。本稿では、「創業者の乱」とまで報じられた雪国まいたけの経営を巡る一連の出来事について概観し、同社をTOBによって傘下におさめたベインキャピタルの杉本勇次・日本代表マネージングディレクターに、TOBに踏み切った経緯と今後の雪国まいたけの成長戦略について聞いた。
マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。
[M&Aスクランブル]
[Q&Aで学ぶM&A実務基礎]