[マールインタビュー]

2022年1月号 327号

(2021/12/09)

アクティビストの最新動向と日本企業への提言

-- 経営者は株主対策の再確認を

古田 温子(アイ・アールジャパン 取締役)
  • A,B,EXコース
古田 温子(ふるた・あつこ、 旧姓:香田<こうだ>)

古田 温子(ふるた・あつこ、 旧姓:香田<こうだ>)

アイ・アールジャパン 取締役
一橋大学商学部卒。1990年に野村證券に入社し、投資銀行業務に従事。敵対的M&Aに対する防衛コンサルティングを立ち上げるとともに敵対的M&Aの有事案件のフィナンシャルアドバイザーを務めるなど豊富な経験を有する。2014年にアイ・アール ジャパンに入社し、投資銀行本部でアクティビスト対応やプロキシーアドバイザリー、リスク分析コンサルティング等に従事。コーポレートガバナンス、資金調達スキーム、企業財務にも精通。主な著書や論文に、「敵対的M&A防衛マニュアル」(野村證券IBコンサルティング部編、中央経済社04年11月)「株主総会判断型の防衛策」(旬刊商事法務05年12月15日号)等がある。2021年11月より経済産業省CGS研究会(第3期)委員。

「水面下」での提案が盛んに

―― 大株主やアクティビストファンド、ストラテジックバイヤーへの対応という観点から、足元の上場企業を取り巻く環境をどう見ますか。

 「日本市場に新たに参入してくるアクティビストが増えています。2019年と比べると、東証1部、時価総額1000億円以上の企業において、アクティビストの保有が確認されている事例が増えてきています。21年にアクティビストキャンペーン(アクティビストが対象企業に送付した書簡を公にし、メディアを巻き込みながら自らの考えを主張する手法)の対象となった『キャンペーン企業』では、平均1.71社のアクティビスト等が株式を保有しています(図表1、2)」

 「日経平均株価の構成企業225社を見ると、アクティビストが保有している企業は約半数です。株主提案の件数を見ても、アクティビストの提案は増加しています。気候変動問題への対応強化や対応策の開示を求めるNPOなど、アクティビスト以外の株主提案も増えています。

 海外では、アクティビストであると自他共に認めるファンドがある一方、『自分たちはバリュー投資家だけど経営にはモノを言いたい』といった対話型のファンドが増えています。株主提案をして自分たちの名前を前面に出すというより、水面下でいろいろな提案をし、経営陣と対話をし、その結果、企業が何らかのアクションをとる、という動きを期待しているわけです。そのほうがコストも掛かりません。このような投資家は今後も増えるのではないかと考えています。

 22年度は『企業が株主提案ではない形でいろいろな提案を受け、水面下で何らかの合意がなされる』、あるいは『企業がいろいろな施策を打ち、その結果株価が上がり、アクティビストが離れていく』といった動きが増えるのではないかと見ています」

―― 対話型のファンドは企業のIR部署に直接対話を持ち掛けるケースが多いのでしょうか。

 「まずは通常のIR面談のような形でミーティングが行われるケースが多いです。その後、

この記事は、Aコース会員、Bコース会員、EXコース会員限定です

マールオンライン会員の方はログインして下さい。ご登録がまだの方は会員登録して下さい。

バックナンバー

おすすめ記事