[マールインタビュー]

2010年3月号 185号

(2010/02/15)

No119 豊富な実務経験をもとに日航支援などの舵を取る

企業再生支援機構 企業再生支援委員長 瀬戸 英雄
  • A,B,EXコース
いきなり嵐の真只中に
――日本航空の経営再建で、企業再生支援機構が一躍、脚光を浴びています。
「機構の設立準備の頃は、産業再生機構の地方版とか中小企業版とかといった受け止め方が一般的でした。そこで我々は、中堅・中小企業だけでなく大企業も対象にしているということを、どう世間にアピールしていこうかと考えていたのですが、そんな必要もなくなりました。日航の問題で事態が急展開し、船出とともに、いきなり嵐の真只中に飛び込んだような感じでした」
――日航のことは予想外でしたか。
「こんなに早く来るかどうかは別にして、いずれは来るだろう、と予想はしていました。サプライズはなく、想定の範囲内です」
――棚からボタ餅とか、逆にババを引いたとか、当初、言われました。
「うまい表現があればいいのですが……(笑い)。ババを引いたなんて思っていません。『公的資金の貸し付けや出資など国の今の仕組みからすると、もう出せるところはない。よく見回してみたら今度、機構ができた。そこへはめこんじゃえ』ということで『機構はとんでもない重荷を背負い込んだ』と仰る方もいたようですが、そのような窮状にある企業のために役立つのがこの機構の本来の目的です」
――機構ができていてよかったですね。
「本当にそうだと思います。産業再生機構が二〇〇七年に解散した後、『地域力再生機構』の構想があり、それから紆余曲折はありましたが、このタイミングで機構が用意されたのは正に天の配剤でしょうね」
――二つの機構の間に二年間の空白期間がありますが、こうした窮境企業のための公的な駆け込み寺的存在を常設組織にしておく必要性がありますか。
「市場原理から乖離し、ある種、毒をもった存在なので、常設にしない方がいい。特定の私企業を国家が支えるわけですから。安易な駆け込みを認めると、企業の側にモラルハザードが起きます。やはり時宜に応じてつくるのがいいのでしょう」
――日航問題に忙殺され、本来、機構が目指している中堅・中小企業の支援が手薄になる心配はありませんか。
「大丈夫です。日航問題に全員が専従しているわけではありません。日航のチームに多数の人手が必要だとしても、外部の法律事務所や会計事務所、さらにビジネスやフィナンシャルのアドバイザーなどが参加しています。機構からはヘッドクオーターとして一〇人も入れば十分です。もちろん、中小企業への取り組みはちゃんとやっています。中小企業支援センターを設置し、キャラバン隊を各地に派遣して相談会なども開催する予定です」
――日航問題では、年金問題がクローズアップされました。
「年金がレガシーコスト(負の遺産)の代表としてワイドショーにも取り上げられ、嫉妬もあってか、受給者が叱責の対象とされるのも異常です。こうした歪みを生じさせた様々な会社運営の要因こそ、一掃しなければならない点でしょう。政権交代があり、事業仕分けが代表的なものですが、あらゆる分野でこれまでの仕組みが見直されるべき段階にきています。将来を見据えた変革には、痛みを伴いますが、避けて通ってはいけない。日本という国、企業もそうですし、一人ひとりの人間もそうかもしれません。特に伝統のある企業は過去の延長線、惰性で経営していくのではなく、時代に即応していくことが求められています」

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