2022年11月、政府は「
スタートアップ育成5か年計画」(以下、5か年計画)を策定し、官民で「スタートアップを数・レベルともに5年で10倍増」という目標を掲げた。5か年計画のロードマップの中にはいくつかの施策が言及されているが、「メンターによる支援事業の拡大・横展開」という点が挙げられたのが興味深い。
年々スタートアップの数は増えている一方で、スケールできている企業が少ないのは、米国などと比べてメンターの数が足りないことが要因の1つと言われる。起業家の想いを咀嚼し、そのゴールに向けた実務プロセスを考え、チームを作って形にする人材が不足しているのが現状で、経験と実績のあるメンターが顧問などでサポートできれば日本のスタートアップは飛躍的に成長し、それが日本経済を活性化させることにつながる。
このほど、SHIFTのM&A責任者である小島氏が気候テックのアスエネと業務オペレーション最適化のFLUX(フラックス)の2社の顧問に就任した。起業家がどのような狙いでメンターとして小島氏を招聘したのか。また、M&A戦略を駆使してどのようにビジネスをスケールさせていくのかを話し合っていただいた。後編の今回はFLUXの永井元治・代表取締役CEOにご登壇いただく。
- <目次>
- AI領域の有望スタートアップ
- FLUXの取り組み
- コンサルティング会社を経て起業
- M&A戦略が不可欠
- 2023年夏にM&Aチームを立ち上げ
- 小島氏を顧問に招聘した背景
- 今後のM&A戦略
- 最後に
Ⅰ.AI領域の有望スタートアップ ――
前編に続き、後編でもM&Aを駆使して事業をスケールさせる戦略を打ち出しているスタートアップのお話を伺います。今回はFLUXです。まずは小島さんがFLUXの顧問を引き受けた理由からお聞かせください。
小島 「前編のインタビューの際にもお話しましたが、グローバルな観点からホットなテクノロジー領域は2つあると思っています。1つは『気候テック』、もう1つは『生成AI』です。日本のAI領域で有望だと私が考えているスタートアップの1つがFLUXです。
FLUXは『日本経済に流れを』をミッションに掲げ、AI技術の開発スキルや知識がなくても簡単にビジネス活用できるノーコードAIプラットフォームの『FLUX AI』を展開しています。AI技術をビジネスに活用するためには専門知識や人材が求められるため、導入が進んでいない企業が多いなかで、FLUXはこの問題を解決することに取り組んでいます。
■小島 秀毅(こじま・ひでたか)
東京外国語大学外国語学部卒業。一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程(MBA)修了。ハーバード・ビジネス・スクールPLD修了(PLDA)。大和証券、GCA(現・フーリハン・ローキー)を経て、2011年に三菱商事にてライフサイエンス本部立ち上げと合わせて同社に入社。食品化学事業において国内外のM&A/PMIを推進し、グループのコア事業に育てる。また、米国企業買収に伴い現地本社でもCEO補佐として北米のM&A/PMI戦略の立案と実行に携わる。2020年からSHIFTにてM&A/PMIを一貫して行える体制を組成し責任者を務める。2022年3月にSHIFTグロース・キャピタルを設立、取締役として参画しM&Aをリード。米国公認会計士。<著書>『クロスボーダーM&Aの契約実務』(共著、中央経済社)
■永井 元治(ながい・げんじ)
慶應義塾大学法学部法律学科卒。米系戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニーで、大手通信キャリアの戦略立案・投資ファンドのデュー・ディリジェンス、商社のM&A案件などに従事。2018年5月FLUXを共同創業。