[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2018/08/30)

西友不振の背景を探る ~ウォルマート流は日本に馴染まないのか

藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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西友不振の根源はどこにある?

 2018年7月に流れた米ウォルマートによる西友売却報道が世間を騒がせている。すでに複数の流通大手や投資ファンドなどに打診しているとされ、買い手候補としてドンキホーテやイオン、アマゾン、アリババ、楽天などが取り沙汰されている。

 当の西友は身売り報道を否定しているが、同社が苦戦を強いられているのは明らかであり、ウォルマートが日本事業から撤退することに大きな違和感を持たないのも事実である。

 西友の店舗数は2010年で373店ほどだったが、現在は335店となっている(18年5月時点)。西友は現在非上場で業績を公開していないが、実店舗が成長している印象はない。不振の理由として、地域に根差した食文化を理解できていない、日本の消費者には毎日同じ低価格で提供するエブリデー・ロー・プライス(EDLP)は馴染まないなど、様々な点が指摘されている。

 多くの指摘のように、西友が不振に陥ったのは、ウォルマート提携後に取った戦略が日本に馴染まなかったからなのだろうか。

 筆者の結論を先に言ってしまうと、西友不振の根源は戦略の選択ミスではなく「実行力の欠如」にある。ウォルマート式を導入する際も、経営陣から現場スタッフにいたるまで徹底してウォルマート流をやり抜こうとしていたとは考えにくい。

ウォルマート提携後の西友

 まずはウォルマート提携後の西友の動きを整理しておこう。

 低迷していた西友が米ウォルマートに駆け込み、資本業務提携したのが2002年3月。05年12月には出資比率を50%に引き上げて子会社化し、07年には95%にまで引き上げ、08年には完全子会社化した。

 EDLPの導入と折り込み広告の廃止、大型スーパーセンターの出店、単品の大量陳列、大幅な人員削減などウォルマート流の経営手法で立て直しを図ったものの…


■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

※詳しい経歴・実績はこちら
※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@research-soken.or.jp

 

 



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