[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2016/02/03)

進む事業のエコシステム化とM&Aの役割

 藤原 裕之((一社)日本リサーチ総合研究所 主任研究員)
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「内部留保」活用先の中心はM&A

 安倍首相は先日22日の施政方針演説の中で、「成長」だけでなく「分配」にも目配りする姿勢を強調した。投資や賃上げの動きの鈍さに業を煮やした官邸が新たに「分配」をアベノミクスに加えたとも言われている。過去最高に積み上がった内部留保を設備投資や給料に回すべきとの声も相変わらず強い。

 こうした内部留保に対する批判は明らかに間違いであり、これまでも多くの専門家が指摘している。改めてポイントを整理すると、政府が内部留保とみている利益剰余金はバランスシート右側の調達サイドであり、これが様々な資産に既に投下(運用)されている。2012~2014年度のバランスシートの変化をみると、調達サイドでは利益剰余金が約50兆円増加している(図表1、図表2)。この50兆円の運用先の中心が、現金・預金(17.5兆円)と投資有価証券(33.1兆円)である。内部留保の運用先として現金・預金が指摘されることが多いが、実際には投資有価証券の増加が約2倍多い。投資有価証券(固定資産)は長期保有を目的とするものであり、国内外の子会社株式や関連会社株式が含まれる。最近は海外現地法人への出資やM&Aなどに積極活用されているとみられる。日経新聞が昨年末に行った「社長100人アンケート」では、内部留保の活用先としてM&Aと株主還元が5割近い回答率に達した。

なぜ設備投資よりM&Aや出資なのか

 内部留保の活用先としてM&Aや出資がなぜこれだけ重視されているのだろうか。

 1つの理由は・・・



■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。

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