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2021年5月20日の本稿で富士フイルムホールディングスを取り上げ、その業態転換の事例を紹介したが、精密機器メーカーの雄であるキヤノンも近年、事業構造の転換に本腰を入れている。同社はカメラ(デジカメ)やオフィス機器(複合機など)の分野で長らくリーディング企業だったが、2010年代の後半に売上高に翳りが見え始め、営業利益率も低下し始めた。スマートフォンが急速に普及しカメラ市場が打撃を受けたほか、モバイル端末やクラウドサービスの充実によってレーザープリンター市場も縮小した。
こうした市場環境の変化を敏感に感じ取り、同社は90年代の後半から推進してきた「グローバル優良企業グループ構想」のもと、2000年代初めから事業構造の転換を模索してきた。同構想は、既存事業(プリンティング、イメージング、メディカル、インダストリアル)に新規事業を加えることによってシナジー効果を生み出し、事業全体の底上げを図るものだ。例えば、祖業であるカメラで蓄積されてきた光学技術は産業用ロボット向けのカメラやネットワークカメラなどに生かされ、IoT時代の流れに沿う事業領域として変わりつつある。...