[M&Aスクランブル]

(2008/12/15)

[潜望鏡] 三角合併第1号の蹉跌

編集長川端久雄
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日興コーディアルの誤算

米銀行大手シティグループの経営難で同社の株価が急落、一時は3ドル台にまで落ち込みました。米政府の追加支援でその後、何とか持ち直したとはいえ、今後3年間は無配に近い状態が続くなど、株主にとっては大変な事態です。
対岸の火事ではありません。2008年1月、旧日興コーディアルグループの株主らは、自分の意思にかかわらず、保有していた日興株をシティ株に交換されました。国境を越えた企業間での株式交換を認めた、いわゆる「三角合併」の第1号でした。対象となったのは日興株2億9010万株で、これがシティ株1億7470万株に交換されました。シティの株価は26.35ドル、日興の株価はプレミアムをつけ1700円相当と評価し、日興1株につきシティ株0.602株が交付されました。交換完了時の株式の合計金額は約48億ドル。日本で多くのシティ株主が誕生したのです。
シティは、これに先立ち、07年春、日興コーディアルグループの子会社化にあたり、まず現金でTOBを実施し、61%を取得しています。価格は1700円です。TOBの価格が安いとして、応じなかった株主もいました。TOBを挟んで、株主数は約4万人から約1万8000人に減少しています。シティはその後、追加取得して議決権で3分の2を確保し、残りの株主を対象に株式交換が行われたのです。いわゆる少数株主排除です。会社法の規定にしたがい、買取請求権を行使した株主もいましたが、大半の株主は手続きが面倒なこともあって行使せず、シティ株の交付を受けていました。
日興コーディアルの当時の社長は会見で、世界有数の金融機関であるシティと組み、わが国No.1の総合金融サービスグループを目指す、従業員の活躍の場も大きくなる、株主、顧客など全てのステークホルダーの利益に資するとコメントしていました。この言葉を信じてシティ株をもち続けていた株主も少なくなかったのではないでしょうか。
しかし、サブプライムローン問題の深刻化で、1年もたたずして、シティ株は7分の1に急落しました。円高も重なります。株主にとって踏んだりけったりです。シティのリストラの余波で日本でも希望退職の募集が始まりました。第1号の予想外の展開に言葉もありません。

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