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(2016/12/14)

グローバリズムが終わると世界はどうなるのか

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 後世に書かれる世界経済史の教科書では、おそらく1980年から2016年の36年間は「グローバル資本主義の時代」として解説されることになるだろう。

 1980年は、前年に英国ではマーガレット・サッチャーが首相となり、そして1年遅れて米国ではロナルド・レーガンが大統領に選出された年だ。二人が選出されるに至るまでの1970年代には二度のオイルショックがあり、先進諸国の富が産油国に移転し、その結果、世界経済は同時不況と物価高に悩まされるという、いわゆる「スタグフレーション」の時代だった。

 スタグフレーションに対してはケインズ経済学も有効ではなく、これを解決すべくシカゴ学派のマネタリズムが復活した。マネタリズムはやがて「サッチャリズム」と「レーガノミックス」という新自由主義経済学に移り変わって主流派となり、これがグローバリズムとなって世界に伝播していった。

 グローバリズムは究極的に1%の富裕層の幸福と99%の人々の不幸をもたらした。それで民衆の不満が2016年に爆発し、英国では国民投票でEU離脱を決定し、米国では異色のドナルド・トランプ氏が新大統領に選出された。英米というアングロサクソン民族が広めたグローバリズムを同じくアングロサクソン民族がこれを終焉させようとしている。

 グローバリズムとはいったい何だったのだろうか?

 グローバリズムは国境を前提とせず、「国境の意義を低下させたうえで展開する資本主義」と定義される。つまり、国家の役割を否定するある種「反国家」の思想なのだ。リーダーは経済的にグローバリゼーションを提唱し、自由貿易を押し付け、産業の国外移転の動きを進めさせた。1980年代の日本でも「ボーダレスワールドの世界」という新語が流行した。

 その究極的な象徴が現在のEUだ。EU域内では人、モノ、金の動きは自由でまるで国境がない。EUはグローバリゼーションの地方版だ。統一通貨「ユーロ」も誕生した。これは理想としては美しいがEUの不幸の始まりとなる。通貨ユーロは強国ドイツにとっては常時割安で他の国々は逆に割高となり貿易戦争はドイツの一人勝ちとなった。統一通貨であるため苦境に陥っても各国は金融政策が取ることができないし、しかも財政政策も緊縮するという縛りをEUはルール化している。こうしてドイツ以外の他の国々の経済は破滅的状態となった。EUを見ればグローバル化の帰結が明らかだ。

 つまるところグローバリズムとは経済戦争だ。そしてそこには国と国との間、企業と企業の間、そして人と人との間、それらそれぞれに勝者と敗者が存在する。これはいわゆる「ウイン・ウイン」の関係ではない。移動が自由だから弱い国の国民は強い国に移転していく。これが移民といわれるものだ。移民は移民先の国民の職場を奪っていく。優秀でしかも低廉な賃金でだ。一方、企業自体も低廉な賃金労働者を求めて海外に工場を移転していく。国内が空洞化し失業者が増加する。こうして勝ち組であるはずの国民の賃金も低下してゆき、全体が敗者となってしまう。99%の一般庶民と富裕層の経済的格差はこのようにして生じてきた。

 グローバル資本主義・新自由主義はまた周期的に繰り返し金融危機を起こしてきた。

 例えば、1980年代後半のアメリカの金融危機、これは住宅ローンを扱う貯蓄貸付組合(S&L)の破たんだ。そして1987年のブラックマンデー。

 1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア金融危機が続き、2007年のアメリカのサブプライムローン危機、2008年のリーマンショックが起きた。

 これらの危機の大本である合成的な金融商品、金融デリバティブはコントロールができなくなっている。つまり金融システムは政府のコントロールができない状態で誰もどうして対処していいのか分からないというのが現在の状況だ。

 そして現在懸念されているのが…

 

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