[M&Aスクランブル]

(2017/02/01)

2016年1-12月の全国・地域別M&A状況

地方のM&A~中小企業の事業承継・事業再生と地域金融機関の対応~

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1.2016年のM&Aは全国的に活発化。うち、「北海道・東北」の買い手は5割増加

 
47都道府県に本社を置く日本企業が2016年に実施(発表)した地方別M&A件数全体を買い手(当事者1)、売り手(当事者2)別に集計して2015年と比較してみると、買い手が2227件、売り手が1872件でそれぞれ前年同期比10.4%増、7.6%増となった(図表1)。都道府県別では、東京都に所在する企業が買い手となる案件が1411件、9.5%増、売り手となる案件が1000件、6.2%増で、それぞれ全体の63.3%、53.4%を占めており依然として東京に集中しているといえるが、他方、東京都以外の地域の買い手となる案件は816件、12.1%増、売り手となる案件は872件、9.4%増と東京都よりも増加率が高いため、東京都以外でもM&Aが活発化しているといえる。

 これを全国6ブロック別に比較してみると、それぞれ全国的に活発だったことがわかった(図表1)。特に「北海道・東北」で買い手が78件、56.0%も増加し、売り手も134件、36.7%増と増加率が高かった。地銀や地元の信用金庫などが出資する投資ファンドが買い手のM&Aが目立った。

 そのほか、「関東・甲信越」で買い手が1545件、8.3%増、売り手が1225件、7.5%増、「北陸・中部」で買い手が141件、6.8%増、売り手が122件、7.0%増、「九州・沖縄」で買い手が85件、34.9%増、売り手が99件、15.1%増と、買い手・売り手ともに増加した。「近畿」では買い手が306件、13.3%増、売り手が215件、6.1%減で、買い手側で勢いを増した。「中国・四国」では買い手が72件、5.3%減に対し、売り手が77件、6.9%の増加だったが、買い手・売り手ともに減少した地域はなかった。

 47都道府県に本社を置く日本企業の経営者や創業家が株式の一定規模を売却した、あるいは事業を売却したいわゆる「事業承継案件」は299件あった。2014年の240件、2015年の263件に続き増加している。2016年12月には、団塊世代の引退時期の到来を念頭に、中小企業庁が「事業承継ガイドライン」を策定。事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策、事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめた。事業承継・事業再生に係わる中小企業への支援体制の構築で、今後益々活発化していくとみられる。

2.全国6ブロック別M&A動向

①北海道・東北地方

 買い手の78件を業種別にみると、「その他金融」が17件、調剤薬局・ドラッグストアなどの「その他小売」が14件、リースなどの「サービス」が8件あった(図表2)。

 「その他金融」では、投資ファンドの増加が目立った。岩手銀行などが出資し、いわぎん事業創造キャピタル(盛岡市)と事業創造キャピタル(新潟市)が共同運営する岩手新事業創造ファンド1号投資事業有限責任組合(盛岡市)が医療機器基盤技術開発・製造販売ベンチャーのセルスペクト(同)に資本参加したほか、一般財団法人旭川産業創造プラザ(北海道旭川市)と旭川信用金庫(同)など道北地域の4信用金庫が出資する有限責任事業組合道北産業応援ファンド(同)が企画・広告代理業のえびすけ(同)などに資本参加するなど、地銀、地元の信用金庫などが出資するファンドによる地域支援の動きが活発化した。

 「その他小売」では、東証1部上場のアインホールディングス(札幌市)による保険調剤薬局経営の葵調剤(仙台市)の買収、メディカル事業・フードサービス事業などのMiK(青森市)による経営再建中の百貨店、中三(同)の買収などがあった。「サービス」では、東証1部上場のカナモト(札幌市)による九州の建機レンタル大手のニシケン(福岡県久留米市)の買収が67億7500万円と目立った。

 売り手の134件を業種別にみると、環境調査・クリーニングなどの「サービス」、調剤薬局などの「その他小売」が各17件と、買い手同様に多かった。

 「サービス」では、エア・ウォーターの全額出資子会社でLPガス販売の北海道エア・ウォーター(札幌市)による環境調査の環境科学研究所(北海道函館市)の買収や、東証1部上場の白洋舎(東京)による北海道旅客鉄道(JR北海道、札幌市)の孫会社でリネンサプライ事業・クリーニング事業の北海道リネンサプライ(同)の買収があった。同社には繊維加工品販売の広瀬商会(東京)も追加出資した。「その他小売」では、調剤薬局事業の阪神調剤ホールディング(兵庫県芦屋市)による同業の医薬品情報センター(宮城県大崎市)の買収、東証1部上場で石油卸のカメイ(仙台市)による調剤薬局運営のエイエム・ファーマシー(宮城県大崎市)の買収など、調剤薬局に対するM&Aが目立った。そのほか・・・


*月別の「全国・地域別M&A状況」は、マールの「地方のM&A ~中小企業の事業承継・事業再生と地域金融機関の対応~」にて掲載中です。
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