[M&Aトピックス]

(2022/03/07)

全銀協が中小企業版の「私的整理ガイドライン」の新指針を策定~「中小企業活性化パッケージ」として中小企業支援を推進へ

  全国銀行協会は3月4日、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」をまとめた。企業の事業再生手続を定めている現行の私的整理ガイドラインは大企業・中小企業を念頭に置いているため、中小企業の実態を踏まえた「中小企業の事業再生ガイドライン」をこのほど新たに策定した。2022年4月15日からの適用となる。

 このほど全銀協が策定した中小企業の事業再生ガイドラインのポイントは、①中小企業の実態を踏まえたプロセスや事業再生計画の基準の明確化、②独立・公平な立場の第三者支援専門家(弁護士、会計士等)による支援――の2点だ。例えば、債務超過を解消するまでの年数は5年以内、経営者責任の扱いについても、感染症等の影響に配慮しながら、必ずしも経営者の退任を求めないという内容にした。その他にも、中小企業者の「平時」「有事」「事業再生計画成立後のフォローアップ」の各段階において、中小企業者・金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化した。弁護士など数百人規模の民間専門家を活用して支援する。

 ガイドラインの第三部には、中小企業者や金融機関等による迅速かつ円滑な私的整理手続を可能とすることを目的とした実務上の留意点を記している(注1)。中小企業者が事業再生等に迅速に取り組めるようにする。

 これまで、債務問題に苦しむ中小事業者を支援するための民間ルールは存在しなかった。2001年に策定された「私的整理に関するガイドライン」は大企業・中堅企業が念頭に置かれており、債務超過を解消するまでの年数が3年以内、経営者責任も原則として退任とするなど、中小企業向けのものではなかった。

 こうした問題意識のもと、全銀協は、21年11月から、中小企業の事業再生等に関するガイドラインを策定するため、検討を重ねてきた。

 他方、経済産業省、金融庁、財務省の各省庁も22年3月4日、コロナ対策をはじめとする中小企業支援を総合的に実施すべく、「中小企業活性化パッケージ」として中小企業支援の対策をまとめた(注2、図表)。「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の策定・活用もこのパッケージ内の一施策として位置づけられる。

 ウクライナ情勢の悪化で経済の不透明感が急速に増す中、多くの中小企業を取り巻く事業環境は今後、厳しさを増す可能性がある。事業再生の必要性に直面する企業への対応や、経営破綻した企業の「再チャレンジ」をどのような枠組みのもとで促すかが、目下、大きな焦点として浮上している。

(注1)全国銀行協会「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」

(注2)「中小企業活性化パッケージ」


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