中小企業庁は5月31日、「中小 M&Aガイドライン見直し検討小委員会」の第3回会議を開催した。同小委員会は、昨年6月28日以来の開催となる。
中小M&Aガイドラインは、昨年9月22日に第2版が公表されている。今回の会議では第3版への改訂の方向性について、以下の事項が検討された。
(1)仲介・FA手数料に関する説明
(2)広告・営業の禁止事項の明記
(3)(仲介の場合)禁止される利益相反行為を具体化
(4)最終契約後に当事者間で争いにつながるリスクがある事項への対応
(5)経営者保証の扱いについて
(6)不適切な事業者の排除について
ガイドラインで求める事項として、(1)仲介・FA手数料に関する説明では、仲介・FAに対して、手数料の詳細な算定基準と考慮要素(サービスの範囲と難易度、サービスの質)等に基づく丁寧な説明、手数料の交渉を受けた場合の誠実な対応が挙げられた。
また、仲介の場合には、利益相反防止の観点から、①仲介契約締結前に相手方の手数料の算定基準の開示を求める。さらに②相手方の手数料を増額する場合にも増額の開示を求めるとともに、自分の手数料を減額する場合には相手方の手数料の扱いについて改めて説明を受けるといった、相手方の手数料の説明が検討事項として挙がった。
委員からは「一番問題の大きい利益相反の話で多く払った方に自分のために働いてもらうという部分を防ごうというのは一番大事なところなので、ここの開示を求めるというのは良い」等の意見が出た。
(2)広告・営業の禁止事項の明記では、禁止を検討すべき行為として①相手方が希望しない等の意思表示をしたにもかかわらず行う広告・営業、②仲介・FAの名称や勧誘の目的等を告げずに行う広告・営業等、4つの事例が示され、議論がなされた。
委員からは「広告・営業については、職業倫理の問題。ただ、過度な場合は倫理の問題だけでなく不法行為につながりうるので、その旨を明らかにしてもいいかもしれない」等の意見があった。
(3)(仲介の場合)禁止される利益相反行為の具体化では、①買い手側から追加で手数料を取得し、買い手側に便宜を図る行為(当事者のニーズに反したマッチングの優先的実施や不当に低額な譲渡価額への誘導等)、②リピーターとなる依頼者を優遇し、当該依頼者に便宜を図る行為等、5つの事例が示された。
委員からは「利益相反防止について、適切な項目については重要事項説明や仲介契約の中で義務として位置づけることを求めてはどうか」等の意見が出た。
(4)最終契約後に当事者間で争いにつながるリスクがある事項への対応では、中小企業向けに、最終契約後に当事者間での争いにつながるリスクがある事項を明示し、具体的なリスクを示してはどうか等の議論がなされた。
(5)経営者保証の扱いについては、売り手側に対するガイダンスの内容や、買い手側、仲介・FA、M&Aプラットフォーマーに対する留意事項が示され、議論が行われた。
委員から「経営者保証の移行は買手の信用力によるが、最終的には金融機関が決めるので、実務上は努力義務とせざるを得ないケースがあり、バランスをとった記載が必要ではないか」等の意見があった。
(6)不適切な事業者の排除については、仲介者・FA、M&Aプラットフォーマーには、買い手側候補に対する信用調査(例:過去3期分の税務申告書等の提出等)をできる限り多くの対象で実施することを求めてはどうか等の検討事例が示された。
委員からは「国として買い手の信用調査を強化していく方針には賛成。ただし、全ての買い手側候補について、初期段階において税務申告書を徴求しないと売り手側を紹介できないとなると、優良案件を含めてM&Aの件数全体が減少する懸念がある。税務申告書の徴求のタイミングは最終契約前までとすべき」等の意見が出た。
次回の第4回会議では、「中小M&Aガイドライン」の修正案が示される予定。また、第4回以降では、「ガイドラインの対象範囲の変更」、「専任条項・テール条項の検討」、「企業概要書への記載内容の提示の検討」、「利益相反の防止を実効的なものとするための社内体制の検討」に関して論点の提示が行われる予定である。
■中小M&Aガイドライン見直し検討小委員会(第3回)