[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2021年4月号 318号

(2021/03/15)

アドバンテッジパートナーズがユーグレナ、東京センチュリーと共同でキューサイを買収した理由

――その経緯とスキーム、成長戦略を担当者が語った

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アドバンテッジパートナーズの束原俊哉パートナー(左)と安永記士ディレクター

アドバンテッジパートナーズの束原俊哉パートナー(左)と安永記士ディレクター

3社共同出資のスキーム

 アドバンテッジパートナーズ(AP)がサービスを提供するファンド(APファンド)、リース大手の東京センチュリー、藻類のミドリムシ(学名:ユーグレナ)を活用した機能性表示食品や化粧品を販売するユーグレナの3社が2021年2月、ケール青汁などで知られる健康食品・化粧品通販のキューサイを買収した。

 買収スキームは、3社が出資する特別目的会社(SPC)を通じて、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(HD)が保有するキューサイの全株式を共同取得するというもの。

スキーム図

 キューサイの創業は1965年、商号を現在のキューサイ株式会社に変更したのは1995年。2007年、東証2部と福岡の各証券取引所に上場していた同社は、投資ファンドによるTOBによって非上場となり、さらに10年3月コカ・コーラウエスト(現コカ・コーラボトラーズジャパンHD)が360億円でファンドから全株式を取得した。2019年になって、米本社の意向もあり、売却が決まったという経緯がある。同社の売却は入札で行われ、米国、中国、韓国勢も参加したが、APファンド、東京センチュリー、ユーグレナ連合が競り落とした。

 APは、1997年に日本で最初のPEファンドを設立。日本の中堅企業を対象としたバイアウトファンド、アジアの中堅企業を対象としたバイアウトファンド、マイノリティ投資を通して上場企業の成長支援を行うプライベートソリューションファンドの運営を行っており、これまでにポッカ・クラシエフーズ、成城石井、コメダ珈琲、富士通インターコネクトテクノロジーズ等60件を超える投資実績を持つ。そのAPのノウハウを活用することで事業投資を新たな収益の柱に育てたいと考えて、APの発行済み株式の14.9%を20年1月に取得したのが東京センチュリーだ。ユーグレナは、2005年世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功した東大発のベンチャーとして知られ、出雲充社長らが同年研究開発企業を設立。12年12月に東証マザーズ、14年には東証1部に上場を果たしている。

 キューサイグループの19年12月期業績は、売上高が249億6800万円、営業利益は27億8300万円、経常利益は26億9400万円、当期純利益は13億円。これに対してユーグレナの20年9月期連結業績は、売上高133億1700万円、営業損失18億700万円、経常損失14億5700万円、当期損失14億8600万円の赤字決算となっている。ユーグレナの観点からは、単独でのキューサイ買収は難しく、それが今回のSPCに3社共同出資することによる株式取得の背景の1つであると見られる。ちなみに、SPCには3社で計234億円を出資。出資比率は、APファンドが67.22%、ユーグレナが12.84%、東京センチュリーが19.94%となっており、本取引から1年以内を目途にユーグレナがSPCへの出資比率を最大49%まで高め、キューサイを連結子会社化することが予定されているとの公表がなされている。

 資金量や事業支援アングルが求められる大型カーブアウトM&A市場への新たな取組類型とも言える今回のキューサイ買収について、APの担当者に聞いた。

<インタビュー>
PEファンドと事業会社の共同投資で“Win・Win・Win”の成果を実現する

 束原 俊哉(アドバンテッジパートナーズ パートナー)
 安永 記士(同 ディレクター)

ユーグレナと組んだ経緯

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