[Webインタビュー]

(2014/04/16)

【第37回】「ハゲタカ」は敵か? ――企業再生に果たすPEファンドの役割

 安東 泰志(ニューホライズン キャピタル 会長兼社長)
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追い込まれる中小企業

―― このほど、『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎刊)を上梓されましたが、まず、安東会長がなぜこの本を書かれたのか、その背景からお願いします。

「『ファンド』に対して、日本ではマイナスイメージばかりが先行しています。しかし、一口にファンドと言っても、その種類は実に様々です。なかには『ハゲタカ』と忌み嫌われても仕方のないファンドもあれば、逆に、破綻しかかっている企業を再生させるファンドもあります。本書は、日本で時として『ハゲタカ』などと呼ばれ、まだまだ本当のことが知られていないプライベート・エクイティー・ファンド(PEファンド)が社会の中で果たしている重要な役割を広く知ってもらい、企業経営者と共に企業の再生や成長を支援してくれる頼り甲斐のあるサポーターであることを理解してもらいたいという一念から執筆しました」

―― 中小企業の現状を見ますと、2013年の3月末に金融円滑化法の期限が切れて、信用金庫や第二地銀などの地域金融機関が支えてきた企業の経営が厳しくなってきています。

「円滑化法の期限切れ以降も金融機関は債務者区分を依然『正常先』『その他要注意先』にして十分な引き当てを積んでいないのが実情ですが、一方で、我々のところに持ち込まれる企業再生案件はこの半年で2倍に増えています。

 どうしてこうなっているのか、これまでの金融行政のプロセスを振り返ってみたいと思います。まず、銀行監督というのは銀行が信用リスクをはじめとする各種リスクをどのように管理しているかをチェックする性格のものですが、特に信用リスクについては貸出資産の『自己査定』を的確に行ない、倒産確率やその場合の回収可能性に応じて正しく引当・償却が行われているかが検証されます。銀行がどういう基準で自己査定を行うかについては、金融庁の金融検査マニュアルに細かく規定されているのですが、自己査定基準を厳格化して厳しい批判を浴びた小泉政権時代に、その批判に配慮して『リレーションシップバンキングの機能強化』が言われるようになり、中小企業に特別の配慮をするようになりました。さらに民主党政権になってからは、金融検査マニュアルに『別冊』として『中小企業融資編』というものが登場して、中小企業に対する自己査定基準が大幅に緩和されると同時に円滑化法が導入されたのです。自己査定基準では、一部の例外を除いて赤字であれば要注意先に区分されますし、金利減免などの貸出条件緩和を行っていたりすれば要管理先となって金融機関には一段と踏み込んだ貸倒引当金の計上が求められます。さらに、実態的に債務超過であったり、延滞があったりすれば、破綻懸念先となります。要管理先や破綻懸念先への新規融資はまず考えられません。ところが、金融検査マニュアル別冊『中小企業融資編』では、例えば業績不振が続いていても実現可能性の高い経営改善計画があるか、または1年以内にそれを策定する可能性が高いと銀行が判断すれば破綻懸念先には区分されないのです。それどころか、債務者がそういう計画を策定していなかったとしても、銀行が作った資料で代替することさえできるようになっていたのです。

 しかし、円滑化法期限切れ以後は、言ってみればモラトリアムを許されていた企業に対する新規融資は行われていないはずです。つまり生かさず殺さずというのが多分大半の銀行の今の対応だと思います。我々のところに持ち込まれる再生案件が増えているのはこうした背景があるからです。

 今後、査定の厳格化が行われたら要管理先以下に分類されますから、金融機関から借入金の返済を求められるようになってくるでしょう。これまでは政治的プレッシャーもあり、また地域金融機関は体力不足の状態にありますから不良債権を増やすと自己資本が不足することになるということで厳格適用が先延ばしにされるという、危うい均衡が保たれていた状態ですが、金融庁も早く正常化したいと考えているはずです。ここへきて地域金融機関の再編が起こっている背景にはそうした金融庁の意向もあると思います」


 

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