[M&Aスクランブル]

(2015/04/01)

企業研究:味の素のM&A戦略に見るグローバルカンパニーへの軌跡とこれから

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 1-3月期の日本企業の海外M&A(IN-OUT)は4兆5000億円に達し、四半期ベースでは2006年1-3月期の3兆7600億円以来9年ぶりに過去最高を更新した。1000億円以上の案件は9件にのぼる。キヤノン、日立製作所、旭化成、ブラザー工業、近鉄エクスプレスなどが自身最大規模のM&Aを決めた。いずれも新たな収益源の確保を狙い、大型M&Aに打って出ている。

 今年は社長の抜擢人事の発表も目立つ。三井物産は4月1日付で安永竜夫執行役員が社長に昇格する「32人抜き」のトップ人事を発表した。富士通もAsiaリージョン長である執行役員副社長の田中達也氏が6月に社長に昇格する。また、デンソーも有馬浩二専務役員の社長昇格を発表した。いずれも14人抜きの抜擢人事だ。

 そうしたなか、3月6日、味の素の社長人事が発表された。社長に昇格する西井孝明氏(55)は現取締役15人の中で最年少と、こちらも抜擢人事だ。同氏は2011年に執行役員人事部長、2013年5月にブラジル味の素社社長、同年6月に取締役常務執行役員ラテンアメリカ本部長に就任した。歴代社長の中で最も若く、また、南米駐在という新興国の責任者から直接抜擢される初の社長となる。

 味の素は、早くから事業の強化、再編にM&Aを活用してきた。2006年にはアジアをはじめ海外食品事業の拡大を目的に、仏食品大手ダノン・グループで中華系液体調味料メーカーの香港アモイ・フードを買収したほか、2009年には食や健康素材からのアプローチ、特長ある医薬品開発を通じ、「グローバル健康貢献企業グループ」を目指すべく、米P&Gグループから日本での骨粗しょう症治療剤リセドロネート事業を譲り受けるなど、重点事業の強化に向けた買い手としての戦略性もさることながら、非重点事業の経営権の手放し方も戦略性の高さが見て取れる。2001年のホーネンコーポレーションと味の素製油の経営統合や2007年のアサヒ飲料とカルピスの自販機事業統合は、味の素にとっては事業の実質売却であったが、統合後の企業をそれぞれ業界トップ、業界4位に浮上させ、競争力の強化につなげている。


 

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