レコフデータは1985年以降のM&Aデータベースを構築しています

キーワード 一覧

[【クロスボーダーM&A】「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」を読む(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2018/06/06)

【第1回】海外M&A成功に向けた3つの要素

小高 正裕(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 クロスボーダーM&A担当 パートナー)
< こちらの記事は、会員登録不要でご覧いただけます >

海外M&A研究会発足の背景


  激化するグローバル競争のなかで、日本企業による海外M&Aが増加傾向にあり、その有効性が増していることは論を俟たないが、一方で当初期待された成果を十分に挙げられていないケースが注目を集めることも少なくない。

図表1 日本企業によるM&Aのマーケット別推移



  こうした状況を踏まえて、経済産業省は2017年8月に「我が国企業による海外M&A研究会」(以下、海外M&A研究会)を設置した。海外M&A研究会の目的は、これまでに海外M&Aに積極的に取り組んできた企業の取り組みや有識者等の知見を踏まえ、日本企業が今後海外M&Aに取り組んでいくための羅針盤となるべく参考になるポイントを整理することであった。デロイト トーマツ コンサルティングも本研究会の事務局として参画し、有識者ディスカッション、政策シンポジウム、企業ヒアリング、アンケート調査を通じて、ポイントの整理を支援させて頂いた。

  その成果は、2018年3月に調査報告書として公開されており、加えて本報告書の内容を経営者に活用してもらうために、「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」(以下、9つの行動)としてコンパクトに取りまとめた。

  本連載では、9つの行動についてその背景にある考え方や実際の企業の取り組み例などの紹介をする。それを通じて、日本企業の海外M&Aに対する理解の促進、ひいては海外M&A成功の一助になれば幸いである。

  9つの行動の全体像をご紹介する前に、初回である今回は本報告書において海外M&Aを実施していく上でのポイントとして定義している「海外M&A成功に向けた3つの要素」を解説したい。

図表2 成功に向けた3つの要素


M&A戦略ストーリーの構想力

  海外M&A成功に向けた3つの要素の1点目は、M&A戦略ストーリーの構想力である。このポイントは、全てのM&Aの成否の分かれ目の起点と言っても過言ではない。M&Aの「成立ありき」に陥ることなく、中長期の時間軸で自社の「目指すべき姿」をまず明確にした上で、そこから逆算して「なぜ海外M&Aが必要なのか」を十分に検討し、その内容を経営者自らが社内外に発信することが重要である。

  このM&A戦略ストーリーの構想力を持つことで、たまたま外部から持ち込まれた案件に十分な思慮なく飛びつくことや、戦略的に正当化しうる価格を上回る値付けで買収を実施することなどの、典型的な失敗を避けることが可能になる。

  M&A戦略ストーリーの構想力を強化するには、いくつかのポイントが存在する。まずは、成長戦略・ストーリーの中で海外M&Aの位置付けを明確化することである。M&Aの検討において、個別の案件が検討の起点になってしまっては「成立ありき」の罠に陥ることが避けがたくなってしまう。成功企業は10年程度の中長期の時間軸で自社の目指すべき姿を描いた上で、そこに至る成長戦略・ストーリーを構築し、その実現の一手段として海外M&Aを位置付けている。これは海外M&Aを検討の起点とするアプローチとは全く異なり、あくまでも海外M&Aは目的実現のための手段の1つに過ぎないという考え方である。海外M&Aを活用せずとも、自前の経営資源で海外進出を果たす方法(オーガニックグロース)もあるし、外部企業との提携・JV等の手段も場合によっては検討しうる。かかる他の手段が存在する中で、なぜ海外M&Aが必要なのか?を考え抜き、その必要性に確信を持つことがまずは必要である。

  次のポイントは、単発の海外M&Aの成功を重視するのではなく、連続的な海外M&A実行による成長を目指すことである。海外M&Aを成長戦略実現のための1ピースと捉えれば、1件の海外M&Aで全てが上手く行くことは考えにくい。前述の逆算の思考に基づき、目的実現に必要な全てのピースを理解した上で、個々の案件を推進していくことが求められる。また、連続的に海外M&Aを実行するということは、1件の大規模な海外M&Aでいわば「逆転ホームラン」を狙わないというスタンスにもつながる。とかく、現在の競争環境において追い込まれた企業が、一発逆転を狙って大規模な海外M&Aに取り組むことが散見されるが、成長戦略上の目的全てに合致する案件は滅多にないこと、大規模な海外M&Aを推進していくにはそれ相応の社内のM&A推進能力が求められること、などから、1件の大規模な海外M&Aによって全て上手く行くという考え方は非常に楽観的であると言わざるを得ない。

  他にも、買収先企業のノウハウやインフラを活用することで海外事業拡大の推進力としたり、買収だけでなくノンコアとなった事業・子会社の売却を通じて自社のポートフォリオを不断に見直したりすることが、M&A戦略ストーリーを構想する上でのポイントと言えよう。


1 2

バックナンバー

おすすめ記事

【第3回】阿波銀行 地方創生推進室

企業研究

[地域金融機関に聞く「M&Aによる地域活性化の現場」(日本政策投資銀行)]

【第3回】阿波銀行 地方創生推進室

日本政策投資銀行 企業戦略部

東海カーボン、独メーカーを1000億円で買収

マーケット動向

[マーケットを読む ~今月のM&A状況~]

NEW 東海カーボン、独メーカーを1000億円で買収

M&A専門誌 マール最新号

アクセスランキング

M&Aフォーラム
NIKKEI TELECOM日経テレコン
日経バリューサーチ

M&A専門誌マール

M&A専門誌マール

「MARR(マール)」は、日本で唯一のM&A専門誌で、「記事編」と「統計とデータ編」で構成されています。

レコフM&Aデータベース

レコフM&Aデータベース

「レコフM&Aデータベース」は、日本企業のM&Aなどどこよりも網羅的に、即日性をもって構築している日本で最も信頼性の高いデータベースです。

セミナー

セミナー

マールの誌面にご登場いただいた実務家、研究者などM&Aの専門家を講師としてお招きし、成功に導くポイント、M&Aの全体プロセスと意思決定手続き、実証研究から見た分析などについてご講演いただきます。

SPEEDA RECOF

SPEEDA RECOF

「SPEEDA RECOF」とは「レコフM&Aデータベース」と株式会社ユーザベースが開発・運営する企業・業界情報プラットフォームである「SPEEDA」がシステム連携します。

NIKKEI TELECOM日経テレコン 日経バリューサーチ

日経テレコン

2002年7月に、日本経済新聞デジタルメディアが運営する日経テレコンの「レコフM&A情報」を通じてM&Aデータの提供を開始しました。

M&Aに関するお問い合わせ、ご相談は
こちらからお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせフォーム