[【コーポレートガバナンス】よくわかるコーポレートガバナンス改革~日本企業の中長期的な成長に向けて~(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)]

(2019/08/01)

【第2回】 取締役会のあり方

汐谷 俊彦(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員)
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"監督"と"執行"の分離がもたらす健全な緊張感が、企業の"稼ぐ力"を後押しする


 コーポレートガバナンス・コードの導入に伴い独立社外取締役を選任する企業が増加していることは事実です。2018年の東京証券取引所のデータでは、東証一部上場企業のうち2人以上の独立取締役を選任している企業は91.3%、取締役の1/3以上の独立取締役を選任している企業は33.6%となっています。一方で、過半数を独立社外取締役で占めている東証一部上場企業は、まだ3.2%に過ぎません(*)。これが米国では、ニューヨーク証券取引所の上場規則で独立取締役は過半数と決められていますから、社外取締役の影響力という意味では日米で格段の差があるのが現状だと思います。

 前回も述べた通りですが、コーポレートガバナンスの究極のキーワードは「ディシプリン(規律)」です。株主から選ばれた取締役が経営陣を監督する。その規律が働いているかどうかで企業の“稼ぐ力”は大きく変わると思います。その意味で、そもそも取締役会は“緊張感みなぎる”場なのです。日本の場合は取締役会の時間はせいぜい2時間程度が一般的ですが、欧米のグローバル企業などでは、丸々1日、場合によっては2日間にわたって取締役会が開催されることがよくあります。国籍も居住地も経験さまざまな社外の取締役が一同に会するわけですから企業にとっては一大イベントです。取締役自身も観光気分で旅行してくるわけではないので、事前に審議される案件に関する情報も資料数百枚にわたり、それらに目を通したことを前提に議論が行われるわけですから事前準備も大変です。大型のM&Aともなれば、全会一致などほとんどありえないですし、多様な経験・バックグラウンドを持つ取締役がそれぞれの深い知見に基づき喧々諤々の議論が行われます。米国の場合、取締役は職務をきちんと果たしていないと見なされればすぐに訴えられるという事情もありますが、まさに真剣勝負の場、取締役を引き受けるということは責任もリスクも含めて超激務となっているのです。業務執行サイドで経営会議において実質的には決めたので、あとは取締役会で追認してもらうだけという日本の形骸化の現状との違いをお分かりいただけるでしょう。 

 

 あなたの会社のトップ(CEO)は、業務執行において誰かに叱責されることなどあるでしょうか?取締役会は本来そのような役割を果たす必要があります。取締役会では社長たるCEOも叱咤激励さ…




デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

■筆者略歴
汐谷 俊彦(しおたに・としひこ)
外資系コンサルティング会社等を経て現職。製造業/テクノロジー/エネルギー/化学/ヘルスケア/商社など幅広い業界に対して成長戦略策定、事業ポートフォリオ見直しといった戦略面での支援や、M&A戦略策定に始まり、デューデリジェンス、PMI計画策定および実行支援・買収後のオペレーション改善といったM&Aライフサイクル全領域において幅広い経験を持つ。特にクロスボーダーM&Aやカーブアウト買収といった複雑で難易度の高い案件を数多く手掛けている。また、日系企業による海外企業の買収を契機に、その後のグローバル化に向けたトランスフォーメーション支援や、買収後の海外企業のターンアラウンド、ガバナンス改革などの案件も支援している。東京大学工学部卒。

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