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[【企業価値評価】事業法人の財務担当者のための企業価値評価入門(早稲田大学大学院 鈴木一功教授)]

(2019/04/03)

【第2回】ファイナンス理論における企業価値評価の考え方と現在価値

鈴木 一功(早稲田大学大学院 経営管理研究科<早稲田大学ビジネススクール>教授)

1.はじめに:ファイナンス理論における企業価値の考え方

  第1回では、様々な企業価値評価手法を紹介しました。そこでは、企業価値評価には大きく分けて、ストック(資産)ベースのアプローチ(コストアプローチ)と、将来企業が生むことのできる利益やキャッシュフローを基に企業価値を計算するフローベースのアプローチ(インカムアプローチ)の2つのアプローチがあること、M&Aにおいて用いられる企業価値手法では、フローベースのアプローチの中でも、企業全体のキャッシュフローに着目し、企業全体の価値をまず求める手法、具体的には、エンタプライズDCF法(マルチプル法では、EV/EBIT、EV/EBITDA倍率)が使われる頻度が高いことを説明しました。エンタプライズDCF法は、利用頻度が高い割に、その考え方を理解するには、一定水準以上のファイナンス理論が必要になるという意味でファイナンスの専門家でない人たちにとっては、ハードルが高い企業価値評価手法です。したがって、以降本連載の説明の大半は、このエンタプライズDCF法(以後、単にDCF法と呼びます)の背景となる理論や、実際の実務での手順に関するものとなります。

  企業の利益やキャッシュフローを基に企業価値を計算することは、企業の収益力の予測から導かれる、ファンダメンタル(本質的)な企業価値を求めることでもあります。それでは、この本質的な企業価値について、ファイナンス理論はどのように考えているのでしょうか。極めて単純にいえば、ファイナンス理論では、「ある資産を売買する際に、売手と買手の双方がどちらも損をしない価格が、市場における価値である」と考えます。(会計学では、このような価値を「公正価値(fair value)」と呼んでいますが、この「公正(fair)」という言葉には、双方が損しないという含意があるように思えます。)

2.資産の価値は、将来発生するキャッシュフローの現在価値の合計

  それでは、この公正な価値について、ファイナンス理論ではどのように考えるかを理解するために、資産を売買する場合を考えます。なお、ここでは株式を考えますが、後述するように「企業の価値」も企業を資産としてみなせば、同じ考え方が適用できます。以下では、具体的に株式の買手と売手の現金の流れ(以下では、キャッシュフローとも呼びます)を見てみましょう。買手は、今現金(株式購入代金)を支払って、その株式から得られる配当や将来その株式を売却した時に得られる現金を手に入れます。ここで現金を受け取る場合を、プラスのキャッシュフロー、支払う場合をマイナスのキャッシュフローと定義すると、買手は現時点のマイナスのキャッシュフローと引き換えに、将来のプラスのキャッシュフローを得る、ともいえます。売手は、その逆に、今現金を受け取る代わりに、将来その株式から得られる配当や売却代金を失います。したがって、現時点でのプラスのキャッシュフローと引き換えに、将来のキャッシュフローを失う、すなわち(逸失利益としての)マイナスのキャッシュフローを甘受することになります。

  ここで仮に、今すぐに支払う株式購入代金と…


■鈴木 一功(すずき かずのり)
早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授
東京大学法学部卒業後、富士銀行入社。INSEAD(欧州経営大学院)MBA(経営学修士)、ロンドン大学(London Business School)金融経済学博士(Ph.D. in Finance)。M&A部門チーフアナリストとして、企業価値評価モデル開発等を担当の後、2001年から中央大学大学院国際会計研究科教授。2012年4月より現職。証券アナリストジャーナル編集委員、みずほ銀行コーポレート・アドバイザリー部のバリュエーション・アドバイザー。主な著書として『企業価値評価(入門編)』、『企業価値評価(実践編)』、『MBAゲーム理論』(いずれもダイヤモンド社)、他にコーポレート・ファイナンス、M&Aに関する論文多数。

※詳しい経歴はこちら


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