[【IR戦略】海外M&Aを成功に導くためのコミュニケーション戦略(アシュトン・コンサルティング)]

(2020/05/20)

【第4回(最終回)】クロスボーダーM&AにおけるPR(コミュニケーション)のケーススタディ

ダン・アンダーウッド(アシュトン・コンサルティング 最高経営責任者)
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 M&Aを成功に導くには、M&Aに関わる各分野の担当者がいかにスムーズに連携・調整してコミュニケーション活動を立案・実行していけるかが鍵となります。広報(PR)担当者だけでなく、経営企画室などのM&Aに関わる部署や、外部のアドバイザーの関与も不可欠です。

 特にクロスボーダーM&Aにおいては、いかに海外ステークホルダーとコミュニケーションを図るかが重要になってくるため、現地の事情や各国の文化の違いなどに精通したアドバイザーが果たす役割は少なくありません。

 日本を拠点にクロスボーダー・コミュニケーションを専門とする弊社が関わってきたクロスボーダーM&A案件の事例の一部をご紹介します。

■ A社:短期間でのM&A発表と準備

 海外企業の買収にあたって、どのようなコミュニケーションを展開すべきか。それまでにそのような経験のない企業の場合、何から手を付けていいのか分からない、ということがあるかと思います。

 コミュニケーションに関する準備期間が数カ月など長い場合には、様々な活動を計画し準備することができますが、短い場合には目的と課題を見極め、優先度をつけて、コアとなる活動を絞り、実行に取り組むことが重要です。特にクロスボーダーM&A案件の場合は、時差のある中で複数言語でのやり取りが必要となってくるため、時間が非常にクリティカルになってきます。

案件概要:
 A社は、国内では買収によって成長を遂げていましたが、さらなる成長へ向け、同社として初めて海外企業を買収することとなりました。A社には広報担当者はいるものの、海外での広報(PR/コミュニケーション)活動の経験がなかったため、現地でのコミュニケーション活動をどのようにすべきか、ゼロからサポートしてほしいという依頼を受けました。案件の受託から実行(対外的な案件発表)までは、数週間というタイトなスケジュールでしたが、弊社は、現地を拠点とする提携PR代理店にサポートを依頼し、本案件に取り組みました。

課題:
A社は、対象企業が拠点を置く国での知名度が低かったため、対象企業の従業員に対し、直接・間接的に、買収によるシナジーをいかに理解してもらうかということが最重要課題でした。また、A社の独自の企業文化は多分に日本的で、従業員向けメッセージも概念的かつ日本的な要素を含んでいたため、単純な英訳では、A社の意図するメッセージが対象企業の従業員にきちんと伝わらないという懸念がありました。

対応:
 課題を基に検討した結果、PMIを見据えながら発表時点では、①本件買収に関して好意的な記事露出を国内外で獲得、②現地では、対象企業の従業員と直接コミュニケーションし、友好的な姿勢をアピールすること――に注力することとしました。そのために、a) 国内外で、同じタイミ…


■筆者履歴


ダン・アンダーウッド(Dan Underwood 最高経営責任者)
ウェリントン・スクール・オブ・ジャーナリズムならびにオタゴ・スクール・オブ・フィジオセラピーを卒業。オタゴ大学より物理療法免許取得。1998年日本に拠点を置くまでの7年間はフリージャーナリストとして、ニュージーランドとオーストラリアの媒体向けに幅広く執筆活動を行う。2002年に共同出資パートナーとしてアシュトン・コンサルティングの経営に参画。ジョン・サンリーと共に、多様な顧客基盤、バイリンガルな企業文化、そして幅広い知見を有する日本有数のクロスボーダーのPR企業へと牽引。日本語に堪能で、多岐に渡る業界の顧客にアドバイスを提供する中、特にM&Aコミュニケーション危機管理対応のチーム統括に加え、メディアトレーニングや幹部向けスピーチトレーニングを行っている。

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