[視点]

2020年3月号 305号

(2020/02/17)

海外M&AのPMIとコンプライアンス

関口 尊成(日比谷中田法律事務所 弁護士、ニューヨーク州弁護士)
  • A,B,EXコース
はじめに

 日本企業による海外企業の買収においては、様々なイシューが関係するが、最近では、Post-Merger Integration(PMI)の議論が盛んだ。
 PMIの議論では、買収後の経営体制再構築、計数管理およびシステム統合に重心が置かれることが多い。一方で、買収先のコンプライアンス態勢の構築については、海外M&AのPMIに焦点を合わせた形での議論はそれほどなされていないのではないかと思われる。
 そこで、本稿では、海外M&Aの買収成立後のPMIの文脈で、買収先のコンプライアンス態勢の構築について考えてみたい。


買収前 Due Diligence

 海外企業の買収では、買収前監査として、Due Diligence(DD)が行われる。法務DD、会計DD、税務DDが基本だが、人事DD、環境DD、システムDD、コンプラDDその他のDDが行われることもある。
 PMIの場面で意外と目にするのが、買収前DDで指摘された事項がそのまま放置されてしまうケースである。一つの原因としては、買収のエグゼキューション(執行)を担当するチームと、買収後のPMIを担当するチームが別々であることが挙げられる。対応策としては、買収前からPMIチームのメンバーに関与してもらうことなどが考えられる。


買収後DD

 買収後DDとは、買収が成立して、買収先を支配下におさめた段階で、リスクの高い分野について改めてDDを行うことを意味する。
 どの分野に高いリスクが潜んでいるかは案件次第だが、

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