[視点]

2015年11月号 253号

(2015/10/15)

「東芝問題に思う」

 平野 正雄(早稲田大学ビジネススクール 教授)
  • A,B,EXコース

  華麗なM&A戦略、先進的なガバナンス、そして素晴らしい経営理念。東芝には、全てが揃っていた。しかし、それとは裏腹であった経営の実態。それだけに今回の名門企業に起きた不正会計事件が社会に与えた衝撃は大きく、我々は今もその落差に戸惑っている。既に様々な報道や論評がなされているが、改めて独自の視点からこの問題を考えて見たい。華麗な戦略がなぜ組織ぐるみの不正に堕して行ったのか。先進的なガバナンスはなぜ機能しなかったのか。素晴らしい企業理念はなぜ空洞化していたのか。東芝事件は、今日の企業経営のあり方に大いなる問題を投げかけている。

重層的な不正のメカニズム

  本事件の原因究明に関して、東芝自身によって設けられた第三者委員会による調査レポートをはじめ、メディアやネット上で多くの調査や分析が飛び交っている。そこから読み取れる東芝の組織体質上の問題は、以下の4点に集約できるであろう。これらが合わさって、恒常的な不正会計に発展して行ったと考えられる。
1) 経営者による直接的な利益嵩上げへの関与
2) 内実を伴わず形骸化された内部統制やガバナンスの制度
3) 全社的な会計倫理の欠落
4) 上意下達の服従的企業文化

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