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[M&A戦略と会計・税務・財務]

2018年1月号 279号

(2017/12/15)

第127回 買収か資本参加か:海外子会社・投資先のコントロールはどうあるべきか(2)

 山内 利夫(PwCアドバイザリー合同会社 ストラテジスト)

【はじめに】

  筆者は、2017年11月号の拙稿にて、海外子会社・投資先のコントロール(管理、統制、支配)における「経営権の確保」と「内部統制・報告の徹底」の意義について述べた。同稿は、投資全般、すなわち海外現地企業との合弁によるグリーンフィールド投資とM&Aによるブラウンフィールド投資の双方を想定したものであった。

  本稿は、同稿を承け、後者の「M&Aによる投資先」のコントロールについて、投資戦略立案からM&A後の統合(Post-Merger Integration:PMI)までのM&Aプロセス全体を見渡し、とりわけPMI段階を意識して一段掘り下げたものである。PMIの技術的留意点については筆者所属先の別の論考に詳しいのでそちらに譲り(https://www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/pwcs-view/pdf/pwcs-view201701-01.pdf)、本稿では、「『M&A投資先のコントロール』に対する視座」を提示する。

1.マジョリティ出資かマイノリティ出資か

  親会社が、自社の行動指針や経営戦略、オペレーションモデルを投資先に浸透させる最も有効な策は、マジョリティ出資により投資先を連結子会社化し、経営権を確保することである。国による違いはあるが、定款変更や解散・合併・大型投資などの重大事項の決議を確実に通すためには概ね3分の2以上の議決権を確保する必要がある。

  経営権の確保は、利益の再投資や配分にかかる意思決定権を確保し、グループファイナンスやキャッシュマネジメントの自由度を担保することも意味する。電機A社は「ASEAN地域で上がった収益は、なるべく同国内でプールし、再投資に回そうとしている」とする。数十社に及ぶ同社のASEAN子会社には現地企業との合弁企業も含まれているが、同国内の再投資に回すという方針を打ち出せるのは、同社が全てのASEAN子会社でマジョリティをとっているためである。

  勿論、マイノリティ出資は、現地企業とゼロから始めるグリーンフィールド投資であっても、M&Aによって現地企業から持分を取得する(あるいは第三者割当増資を引き受ける)ブラウンフィールド投資であっても、市場参入の一手段として有効である。政治・経済的変動の大きい新興国市場への投資や、リスクとリターンの把握が難しい新規事業、新技術への投資では、最初はマイノリティ出資に留めておき、事業に必要なリソースと投資リスクを「ひとまず」相手方に担ってもらうことが戦略オプションの一つとなる。マイノリティ出資で「試してみてから」、出資比率を引き上げるなり、持分を売却して撤退するなり、次の手を打つことは合理的な策と言える。

  とはいえ、経営権を確保できていない場合、共同投資相手と利益の再投資や配分の方針で揉めることがある。機械B社は、あるASEAN加盟国で、現地のオーナー企業と合弁会社を設立した。合弁会社の製品はB社の技術とブランドで製造・販売されていたが、B社はマイノリティ出資者であった。ところが、現地企業の成長につれてオーナーの発言力が高まり、オーナーは自身の持株比率の引き上げや増配を要求することが多くなったという。当該事業はBtoBであり、地元の名士であるオーナーの人脈を無視できず、B社は対処に困っていた。B社は、当該国で既に築いたブランドとその周辺国の市場のポテンシャルを考慮し、オーナーの持分の一部を高値で買い上げ、マジョリティ出資に切り替えた。このような事例に鑑み、「マジョリティをとれない合弁やM&Aはやらない」(精密機器C社)と断言する企業もある。

  企業がマジョリティ出資を選択した方が良いのは、

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