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(2019/11/27)

神戸物産 ~六次産業化で「食」の製販一体(SPA)を追求~

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1.「食」のプロ相手の「業務スーパー」FC展開で急成長

  日本チェーンストア協会によると、スーパーマーケット市場の総販売額は1997年の16兆8635億円をピークに縮小の一途をたどり、2018年には12兆9883億円にまで落ち込んでいる。

 そのような中で、「業務スーパー」を全国にフランチャイズ(以下、FC)展開する神戸物産の成長が著しい。

 神戸物産がFC本部として展開する「業務スーパー」は、「エブリデイロープライス(毎日がお買得)」をコンセプトにしており、食のプロが満足できるような高品質で低価格、安全な商品を販売することを基本としている。屋号からは事業者向けと思われるが、いまや利用者の大半は一般消費者となっており、同社の急成長を支えたのは、「安くて良いものを」という個人客のニーズを自社の商品開発力で取り込めたことが大きい。

 主力は、自社やグループの工場で製造したオリジナルのプライベートブランド(以下、PB)商品で、全商品の約3割を占める。海外から直輸入した商品も販売しており、最近では台湾から仕入れていたタピオカがブームの影響によりヒット商品となった。

 一般的なスーパーと違い、輸入商社や卸などの中間マージンを省いた直接仕入れを行っているため仕入れコストを削減でき、商品構成も冷凍食品や常温食品を中心とすることで廃棄ロスを少なくし、ローコスト運営を徹底。曜日ごとの特売や過剰な広告を行わず、広告費用や人件費も抑制するなど、無駄をなくす工夫を行っている。

 店舗数は2019年9月末で840店舗を展開する。うち、直営店は2店舗だけで、残り838店舗はFC店となっている。そのため、不動産取得・賃借のリスクを背負わず、店舗の人件費などの販売費、一般管理費はほかの業務スーパーや食品スーパーより低く抑えられている(図表1)。
一方、FC契約によるロイヤリティは仕入金額の1%であり、加盟店からのロイヤリティ収入がメインビジネスとなってはいない。収益の柱となっているのは食品の製造と卸売である。神戸物産は、「食」の製販一体体制(以下、SPA)や六次産業化(一次×二次×三次=六次)を掲げ、M&Aなどを巧みに使いながら事業拡大を図ってきた。



2. 業績は過去最高を更新、時価総額は5年で10倍に

 業績も好調だ(図表2)。2018年10月期の売上高は2671億円(前年同期比6.2%増)、純利益103億円(同24.2%増)となり、過去最高を更新した。2019年10月期通期の業績見通しも売上高2819億円(同5.5%増)、純利益は108億円(同4.2%増)を見込む。株価も右肩上がりで推移しており、2014年10月末に418億円だった時価総額は、2019年10月末に4384億円と、5年で10倍にまで成長した。同日時点では、J.フロント リテイリング(3747億円)や三越伊勢丹ホールディングス(3436億円)などの百貨店を上回り、…

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