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[「M&A基礎講座」 未上場企業買収後のPMIの実務 ~CFOの視点から~]

(2017/10/18)

第3部 ITへの対応

第6回 ITへの対応

 熊谷 知範(株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部 経営支援第2部長)

1.IT投資の重要性

  買収を検討する会社やPEは、シナジー効果の発現やバリューアップのために経営権取得後、種々の投資を行うことを想定しているケースも多いことでしょう。

  その中でもIT投資は近年、重要性が増している投資といえます。IT投資が重要な理由は企業の取引量が増加し、エクセルを含む手作業での情報の集計・加工では事務負担がかかり過ぎて社内のリソースでの対応に限界があることが理由のひとつとして挙げられます。また、ITを駆使することで複雑化した現代の企業経営における情報のロジスティクスを有機的にかつ効率的に連携させることが可能となります。

2.PMIフェーズにおけるIT投資の特徴

  PMIフェーズにおいて実施されるIT投資の主な目的は「経営情報の入手」にあります。

 CFOを含む経営陣が様々な意思決定を行うためには現場の経営情報を「適時・適切」な形で入手する必要があります。一般に、M&Aの成功の可否はPMIの初動で決まるといっても過言ではないことから、これらの情報の入手プロセスが初期の段階で整備・確立されている必要があります。

  経営情報の代表例は売上(販売)情報です。アパレル業を例にして考えてみましょう。販売担当責任者は「日々」、CFOをはじめとする経営陣は「定期的」に下記情報を入手し、最新の営業の状況を都度把握する必要があります。

 ・日別の売上金額
 ・販売した商品の点数
 ・販売した商品の内容(単価や値引きの情報を含む)
 ・販売した時間帯
 ・購入者の情報

  ちなみにこれらの情報の入手、整理の方法についてはITの導入状況によって以下の3つのレベルがあります。

(1)エクセル

  店長がエクセルで販売情報を整理し、本社に報告し、本社の営業管理部門がエクセルで集計の上、経営陣に報告します。人的リソースでの加工が発生することから日次であっても最速で翌日の午後くらいに報告があがるスピード感です。店舗の状況によっては報告が一部漏れるケースもありえるでしょう。また、売上の多い店舗ほど集計に時間がかかってしまうというジレンマを抱えるうえ、データの精度に限界があるといえます。

(2)キャッシュレジスターでのデータ蓄積

  キャッシュレジスターに販売商品のマスタデータが登録されており、毎日の販売情報がUSBに蓄積されます。これらの販売情報を定期的にパソコン等に移管することで販売情報を電子データとして入手することができます。これらの電子データを本社の営業管理部門がエクセルで集計し経営陣に報告します。

  このパターンでは①と比較してUSB経由とはいえ、店長の手を介さず正確なデータを入手することができます。また、エクセルで情報を加工する手間が生じないため、店長が費やす必要のある事務作業時間を削減することができることになります。その意味ではスピード感が少し上がった程度といえるでしょう。

(3)POSレジ、販売管理システム

  店舗がPOS(Point of sales)レジを導入している場合は販売情報が自動集計され、クラウド上の販売管理システムに集約されます。さらに、それらの情報はリアルタイムで更新されます。1日の売上を確定する処理自体を営業管理部門が行うだけで販売情報が適切にデータ化されます。あとはそのデータをほぼそのまま経営陣に報告するだけ、ということになります。このレベルはほかのレベルと違い、正確かつ効率的に、そして最速で経営陣に情報が提供されることになります。

  いうまでもなく、(3)が最も高いレベルのIT環境を構築しています。一方、(1)はそもそもIT投資を行っていない状態といえるでしょう。後述しますが、IT投資を成功させるためには後述のとおり、資金、人的リソース、時間を要します。(3)のレベルのIT環境を目指すことはもちろん大事ですが、全体としてはその他PMIで検出されたITで対応すべき課題の全てを俯瞰し優先順位をつけたうえで、投資意思決定を行うのが肝要といえるでしょう。

3.IT投資の類型

  以下は主に管理系を中心としたIT投資を想定して展開していきます(ただ、この類型はおおむねどの分野のIT投資にもあてはまります)。CFOがIT投資の可否について検討する上ではそのIT投資の内容がどのようなものであるかをまず把握しておく必要があります。主にはカスタマイズ(加工)のレベルによって以下の3類型を理解しておくとよいでしょう。

  

(1)パッケージ商品

  このパターンは市販されているソフトを購入し業務に「そのまま」利用するパターンです。投資実行前に投資対象会社がオーナー企業で管理部門に積極的に経営資源を投入していなかった会社の場合、まずはこのパターンによるIT投資を想定することが多いと考えられます。

  このパターンを採用するメリットは…

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株式会社エスネットワークス

■筆者略歴
熊谷知範(くまがい・とものり)
慶應義塾大学卒業。公認会計士試験合格後、株式会社エスネットワークスに入社。未上場会社での経理実務支援、未上場会社での経理BPR業務、上場企業でのIFRS導入支援、ファンド投資先での管理部長代行業務に従事。その他、バリエーション業務、デューデリジェンス業務、フィナンシャル・アドバイザー業務を多数経験。直近ではファンド投資先のPMI支援を主に担当。

[関連記事] 【エスネットワークス】 M&A後に必要な現場力を常駐支援で提供して戦略実行を実現する(マール 2015年12月号)

 

 

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