[M&Aフォーラム賞]

2017年11月号 277号

(2017/10/17)

第11回 M&Aフォーラム賞が決定――M&Aフォーラム賞『RECOF賞』などに4作品を選定

日本企業のM&Aの進化(深化)につながる活動を今後も展開

落合氏  また、M&Aフォーラムの落合誠一会長(東京大学 名誉教授)は、同フォーラムの活動について次のように述べた。

「私どもM&Aフォーラムは、2005年に内閣府経済社会総合研究所のM&A研究会で設立が提唱され、民間ベースのフォーラムとして発足しました。

  この間、M&A活動が、わが国経済の持続的成長、あるいは産業・企業の成長・発展に寄与するという設立の目的に基づき、わが国におけるM&A活動の普及・啓発を図り、あわせてM&Aに精通した人材の育成を目指して、M&A人材を育成するべく『M&A人材育成塾』とM&Aをテーマとした書籍、研究論文を顕彰する『M&Aフォーラム賞』の2つの事業を軸として、着実に実績を積み上げてまいりました。

  『M&A人材育成塾』と称する研修事業は、2006年から今日までに開催された講座は5つのコースで計36を数え、ご活用された企業数は延べ750社、受講者は1160名の方々にご参加を頂いています。講師は、カリキュラムに合わせて、M&A業界の実務に携わる第一人者の方々をお願いしております。

  中でも2009年からスタートしたM&A実務担当者向けの“M&A実践実務講座”は、この10月に27回目の開催を予定しております。今回は、特別編成プログラムとして開講され、基礎から実践までM&A実務の要点を解説する5つのプログラムをベースに、特別編として、M&Aの法務や事業法人のディールマネジメントをテーマにした講義をラインナップに加えました。カレントな事例やトピックを取り入れ、双方向での講義やグループワークなど講義スタイルにも工夫が施され、総合的にM&Aを学べる講座となっています。

  もう一つは、今回11回目を迎えました『M&Aフォーラム賞』です。わが国のM&Aの普及啓発、発展に資する優れた書籍、研究論文に対して表彰する制度で、毎年実施してまいりましたが、節目となる前回の第10回までに36の書籍・研究論文が受賞しています。

  受賞作品を一覧すると、毎回、その時節のわが国のM&Aの実情を反映した作品が応募されており、わが国のM&Aの発展の状況が判るという側面があります。

  岩田一政選考委員長の元、選考委員会において、毎回、厳正なる審査が行われており、今回は、ここ数年の中では最も多い応募を頂戴し、また、これまでと同様、いずれも大変レベルの高い作品であったと聞いております。特に受賞作品は、いずれも甲乙つけがたく、今回も選考委員の先生方を悩ませたそうです。お忙しいところ、岩田委員長を始め、審査の労を賜りました選考委員の先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

  今やM&Aは、世界の潮流となっています。日本でも、M&Aを中長期の成長戦略において積極的に取り入れる企業は増え、業容拡大、海外展開の足掛りとしても活用されています。他方、十分な成果の上がらないM&Aや減損を余儀なくされるケースも見受けられます。重要な経営手段の一つとなったM&Aを効果的に実行するためには、個々の企業において、その経験・ノウハウを蓄積し、次なるM&Aに活かしていく取り組みも必要です。本フォーラムにおいても、わが国企業のM&Aの進化(深化)につながる活動を今後も展開していきたく存じます。

  皆様には、本フォーラムの趣旨のご理解を賜り、より一層ご支援の程お願い致します」

受賞者の言葉

  受賞者は、それぞれ次のように喜びの言葉を述べた。

【受賞者の言葉】

■【正賞】 『日本の公開買付け -制度と実証』

【編著】 田中 亘(東京大学社会科学研究所 教授)
森・濱田松本法律事務所

田中亘氏(編者代表 田中 亘)「この度は、M&Aフォーラム賞正賞(RECOF賞)を受賞し、誠に光栄に存じます。審査の労をおとりいただいた選考委員会の皆さまに、執筆者を代表して、お礼申し上げます。
  本書『日本の公開買付け』は、森・濱田松本法律事務所が整備されている公開買付けに関するデータベースに基づき、法学者および経済学者が、同事務所弁護士と行った共同研究の成果物です。エビデンスに基づく政策決定の必要が指摘されている今日、このような共同研究の重要性は、いっそう高まっていると考えます。
  平成18年証券取引法改正から10年が経ち、この間の実務の進展や学会の議論の蓄積に基づき、公開買付制度全般について分析、評価を行い、かつそれを踏まえて、法改正を含めた制度全般の改善、見直しを検討すべき時期に来ていると考えます。本書が、そうした分析、検討の契機となれば幸いに存じます」

■【奨励賞】 『上場会社組織再編または企業買収にかかる会社法株式価格決定裁判における「公正な価格」および「公正な取得価格」の統一的算定方法』
石塚 明人
「このたびは、奨励賞(RECOF 奨励賞)を受賞させて頂きまして大変光栄に存じます。審査および評価して下さった選考委員会の諸先生方、さらにこのような受賞機会を提供して下さいました主催者・関係者の方々に深く御礼申し上げます。
  受賞対象となりました論稿は、組織再編あるいは企業買収に関連した会社法上の株式価格決定裁判において、買収対価が現金か株式かの違い、さらに買収方法が二段階買収(公開買付前置型の)かそうでないかの違いに依存せず、統一的かつ整合的に適用できる価格算定方法を提案しております。その際、経済学やファイナンス理論など企業法学に隣接する諸科学の知見も活用し、裁判実務で求められている具体的な算定数値をも提示し検証したのが特色です。
  まだ多くの検討課題が残されておりますが、我が国における公正なM&Aの普及に微力ながら寄与できるよう、今後とも地道に事例の検証を積み上げ新たな知見が得られるよう日々精進して参ります」

■【奨励賞】 『日本買い 外資系M&Aの真実 (Inbound M&A)』
加藤 有治(イースト・インベストメント・キャピタル株式会社 代表取締役)
加藤有治氏「今回、このようなM&A業界で最も伝統ある賞を頂き、大変光栄に思います。ありがとうございました。
  現在、日本への対内直接投資は、対外直接投資の約6分の1、GDP比では世界最低水準といわれています。また、日本においては生産人口の減少が止まらず、優雅な衰退の道をたどるかに見えます。そのような中、本書では、成熟しきった日本の枠を超え、インバウンドM&Aという手法を積極的に活用して、技術、人材、知識を、海外から日本に持ち込むことの重要性を主題としました。
  本書がより多くの人の目に触れることにより、既に多くの実績があるアウトバウンドM&Aに加えて、インバウンドM&Aで海外経営資源を導入する事例が少しでも増えれば嬉しく思います。
  最後に、多大なご指導、ご支援をいただきました、日本経済新聞出版社様、同僚、友人の方々に、この場を借りて御礼申し上げます」

■【選考委員会特別賞】『日本国内のネットサービス分野におけるM&Aを通じた株主価値創造 ~イベント・スタディによる検証~』
和家 智也(早稲田大学ビジネススクール 商学研究科 2017年3月修了)
和家智也氏 「このたびは、第11回M&Aフォーラム賞選考委員会特別賞をいただき誠に光栄に存じます。選考委員の先生方ならびに関係者の皆様には厚く御礼申し上げます。
  本論文は、平素インターネットサービス分野のM&Aアドバイザーとして実務に携わりながら、当該分野の企業が実施するM&Aが株主価値を創造しているか、またどのような条件下のM&Aがより株主価値を創造するのかについて研究を行ったものであります。イベント・スタディによる実証研究を行い、ネットサービス分野においても、先行研究と同様に株主価値創造を確認することができたこと、さらに要因分析では事業関連性やM&A形態別等の分析において一定の結果が得られたことは大変嬉しく思っております。
  今回の受賞を励みとして、今後は長期的な指標に基づく分析と株価効果の研究を行い、日本におけるM&A業界の成長と発展に微力ながら寄与できるよう日々精進してまいりたいと存じます」

  • 1
  • 2

バックナンバー

おすすめ記事