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[寄稿・寄稿フォーラム]

2017年6月号 272号

(2017/05/18)

日本におけるFinTechの進展と将来課題

 堀 天子(森・濱田松本法律事務所 弁護士)

1 はじめに

  近年FinTechに対する関心は高まっており、FinTech関連の投資も活況である。日本においては、FinTechが既存金融機関を脅かすまでの規模には至っておらず、むしろ欧米をベンチマークとする日本の規制当局がFinTechへの対応を金融機関に迫りつつ、スタートアップの取組みを後押ししている状況といえる。以下、FinTechの成り立ちについて欧米と日本との違いに言及しつつ、日本においてFinTechがどのような環境の下で現在進展しているかについて述べたうえで、将来に向けた課題について付言することで、投資を検討するに当たっての留意点を示すこととしたい。

2 FinTechの成り立ち

(1) 欧米におけるFinTechの成り立ち

  FinTechはITを活用して新しいビジネスモデルの金融サービスを作り上げることを目的とした活動を指している。欧米では2008年に起きたリーマンショックを契機として、金融業界の人材が流動化し、既存の金融機関が提供するサービスに不満を持つ層に対して、革新的な金融サービスを提供しようとしたのが発端となっている。クラウドサービスの普及によって、スタートアップ企業でも試行錯誤して新たな金融サービスの開発を行うことが可能となったこと、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル端末が普及したことによって、利用者の行動様式が変わり、手元で直接金融サービスを受けることが可能となったことは、FinTechの流れを不可避なものとしたといえる。

(2) 日本におけるFinTechの成り立ち

  これに対し、日本では、リーマンショックの傷が浅かったことや、既存の金融機関に対する一般の消費者の信頼が高いこと、インターネットバンキング比率が低く、キャッシュレス化がそれほど進んでいないなどの環境の違いもあり、FinTechの動きは目立ったものではなかった。

  もっとも、日本では、2000年代のはじめから、情報通信技術の革新やインターネットの普及等により、主として個人が利用する少額決済に関して、IC型のプリペイドカードをはじめとする電子マネーや、コンビニエンスストアによる収納代行サービス、運送業者による代金引換サービスが普及するなど、銀行以外の事業者による新しいサービスが発達してきた。こうした決済を巡る環境が大きく変化する中で、2008年には、金融審議会の下で決済に関するワーキング・グループが設置、検討が重ねられ、利用者保護、決済システムの安全性、効率性、利便性の向上やイノベーション促進の観点から、制度的枠組みのあり方の提言がなされた。そして、2010年に資金決済に関する法律が成立、サーバ型の前払式支払手段の発行者が規制対象となり、銀行以外の事業者にも登録制によって為替取引(送金)を行うことを認められ、既存の金融機関以外の事業者も金融サービスの担い手として決済・送金市場に参入するようになっていった。2013年には米国証券法の改正を追う形で、未上場企業へのリスクマネー供給を充実させる手段として、投資型クラウドファンディングを実現しやすくするため、金融商品取引法の改正がなされた。2014年には、ビットコインの取引所であるマウントゴックス社が日本で破たんしたことにより、議員の質問に答える形でビットコインは通貨ではなく、特に法律で規制された対象ではない旨の政府見解がなされたりもしていた。

  こうした間にも、欧米を中心とする先進国では、データの蓄積が進み、試行錯誤の結果、金融サービスを大きく変革させようとするスタートアップが続出、金融市場で存在感を発揮しはじめ、既存の金融機関が事業モデルの転換を急ぐ動きを見せ始めた。欧米の金融機関や金融当局の動向を踏まえ、日本でもFinTechが大きなインパクトをもたらす事象であることが理解され始めた。金融庁が金融行政方針でFinTechを取り上げたのが2015年9月である。

3 政府及び規制当局の状況

(1) 金融行政方針

  上記の経緯からみても明らかなように、日本においてはFinTechベンチャーが市場で影響力を有するようになったというよりは、欧米をベンチマークとする日本の規制当局がFinTechへの対応を金融機関に迫る動きが顕著となっている。

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