[Webインタビュー]

(2020/10/14)

【第121回】三田証券と業務提携してTOB代理人業務に参入した理由

清明 祐子(マネックス証券 代表取締役社長)
  • A,B,C,EXコース


公開買付代理人業務で個人株主に対するサポートを強化

―― 三田証券と業務提携されて、TOB(株式公開買付)代理人業務に参入されました。この提携の経緯と狙いについて聞かせてください。

「最近、TOBを巡ってアクティビストの活動が話題になっていますが、マネックス証券では、2019年1月から個人投資家の声を発行体に届けるための活動『マネックス・アクティビスト・フォーラム』を開始しております。第1回の会場型イベントには、個人投資家約1000人をお招きし、海外のアクティビストファンドを含む現役のファンドマネージャーや企業価値向上に取り組む有識者などが株主としての権利行使や企業の情報収集についてディスカッションしました。

 日本株は12年末以降、日本企業の利益水準の高まりもあって、上昇傾向を続けてきました。しかし、18年に日経平均株価が12年以来はじめて年間で下落に転じ、外国人投資家も同期間で最大の売り越しとなりました。PER(株価収益率)PBR(株価純資産倍率)などの株式指標で見ても過去最も割安な水準でした。日本株は個人投資家に多く保有されていまして、直接の保有だけで全体の17%に達しています。個人投資家が動くことは日本の市場を変革しうる力があるのです。しかし、現在、個人投資家はその株主としての権利を十分に行使していないだけでなく、株主権利を十分に知る機会も少ないという状況です。マネックス証券は、個人投資家と日本企業のコミュニケーションがよりよくなることで、日本のマーケットは活性化され、株価は上昇しうると考えています。

 証券会社の仕事は、単に商品を提供するということだけではなく、資本市場の活性化に貢献していくことも重要だという認識がその背景にはあります。

 14年2月のスチュワードシップ・コードの公表、同年6月の会社法の一部を改正する法律の成立(2015年5月施行)、15年6月の東証のコーポレートガバナンス・コードの制定・施行、17年5月のスチュワードシップ・コードの改訂、18年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂、さらに同改訂に合わせて公表された金融庁の『投資家と企業の対話ガイドライン』の確定などによって、例えば、上場企業で独立社外取締役を置く会社の比率は15、6年頃から急増しています。こうしたことを背景に、アクティビズムは決して企業や個人投資家にとって悪いことではないという認識が日本の中でも少しずつ醸成されてきて、TOBも実際に増えてきています。

 このTOBに個人株主が保有株式の応募をするには、『公開買付代理人もしくは公開買付復代理人(証券会社)にお客様の証券総合口座を開設の上で、代理人証券会社へ当該株式の移管手続きをしていただく必要があります。しかし、これまでマネックス証券で株取引をしていただいている個人のお客様がTOBに応募したいと考えても、私どもでは応募できないという不便さがありました。

 TOBの機会があった際に、当社で応募いただけるような環境を整える方がいいということはかねてから考えていました。ただ、当社では公開買付代理人業務を行っていませんでしたから、ノウハウの蓄積もなかったのです。一方、三田証券はどちらかというと法人株主および非居住者株主等の応募の受付に強みを持っておられるので、個人株主に対するサポートに強みを持っているマネックス証券と公開買付代理人業務で役割分担して協業できるということで今回の提携に至ったわけです」

『敵対的』TOBも

―― 日本企業も敵対的TOBを国内企業にかけるケースが出てきています。敵対的TOBに関する考え方も変わってきていると思いますか。

「変わってきていますね。まず『敵対的』とは誰から見て敵対的なのかについての認識の変化があります。これまでは、経営陣から見たときに敵対的かどうかが基準になっていたように思います。しかし、株主から見たときには必ずしも同じではありません。はたして現経営陣が考える方針と戦略でその会社を運営した方がいいのか、あるいはTOB提案を受け入れた方が収益性向上に貢献するのか、と考えた時に、提案を受け入れた方が、結果的に株価が上がる可能性があって、株主にとっては全然敵対的ではなくてむしろウェルカムな話だった、ということもあります。…









■せいめい ゆうこ
2001年京都大学経済学部卒業。三和銀行(現株式会社三菱UFJ銀行)入行。06年MKSパートナーズ入社。09年マネックス・ハンブレクト入社。11年マネックス・ハンブレクト代表取締役社長。13年マネックスグループ執行役員。15年マネックスグループ常務執行役員。16年マネックスベンチャーズ代表取締役。17年4月マネックス証券常務執行役員。マネックス・セゾン・バンガード投資顧問代表取締役。17年10月マネックス証券専務執行役員。18年3月マネックス・セゾン・バンガード投資顧問取締役。18年4月マネックス証券副社長執行役員。マネックスグループ常務執行役。TradeStation Group, Inc.取締役(現任)。19年4月マネックス証券代表取締役社長(現任)。19年11月 マネックスグループ常務執行役COO。20年1月マネックスグループ代表執行役COO(現任)。

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