[産業構造の変化に対応するM&Aの実務]

2013年11月号 229号

(2013/10/15)

第17回 銀行の東南アジア展開とM&Aの実務

 島田 英海(EYトランザクション・アドバイザリー・サービス ディレクター)
  • A,B,EXコース

  日本のメガバンクは東南アジアでの存在感を高めています。銀行業務、インフラ投資、リテール戦略、資金決済、リース、ノンバンクと幅広い領域で進出の活路を見出しています。成長する若い新興国市場の銀行の概要を把握し、アジア新興国を主戦場としてM&Aを進める日本の銀行のニーズに応じて、買収前後のM&Aアドバイザリー業務に必要な実務を整理してみます。

1. はじめに

  急速な成長を続けるアジアの新興国に対して、インフラ整備や成長産業への設備投資に海外からの資金が流入しています。従来は欧米の銀行が主として資金を供給してきましたが、金融危機以降は資本不足のため、融資の縮小や事業の撤退の動きが見られます。このような環境下で、シンジケートローンやプロジェクトファイナンスの分野で日本の銀行は存在感を高めています。
  日本の大手メガバンクは、アジアの銀行市場において、主幹事として取りまとめた協調融資(シンジケートローン)額で、2012年には1位から3位までを独占しました。国内市場の飽和する中、アジア諸国の融資案件に取り組むことで、新興国の成長を大きなビジネスチャンスとして捉えています。
<図表1:アジアの対内直接投資の日本の割合>    その背景には、日本がODA支援やインフラ投資において、アジア諸国に多額の直接投資を行ってきた実績があります。アジア全体の対内直接投資の中で日本が占める割合は10-30%とかなり高く、特にタイは、3分の1以上(約35%)を日本からの直接投資に依存しています。(図表1参照)
 アジアの銀行M&Aの案件は、現地企業との戦略的提携に加えて、欧州銀行の出口案件への出資も目立っています。

 

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