[M&Aスクランブル]

(2020/03/25)

新型コロナウイルス治療に向け、M&A効果最大活用が期待される武田薬品工業

マール企業価値研究グループ
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 武田薬品工業(以下、武田)によるアイルランド製薬大手のシャイアーの買収から1年余りが経過した。この買収劇は日本のM&A史上最大の買収額(6兆9000億円)となったことで注目された。この買収により、シャイアーは武田の完全子会社となり両社の売上単純合計は3兆4000億円(2018年)に達し、世界第9位のメガ製薬企業の誕生となった。もともと武田は成長を牽引する新製品を長期にわたって世に出せておらず、収益力の低迷にあえいでいた。そこで武田は事業の選択と集中戦略を採り、希少疾患や血液製剤分野で強みをもつシャイアーの買収を決断した。シャイアーは患者数が少なくても利益率が高い新薬候補を比較的多く抱えており、競争相手も少ない(特に血液製剤はヒトの血液から製造するため、後発薬がなく高収益製品、市場の成長率は年6%程度といわれる)。武田は従来の得意分野である、消化器系疾患、中枢神経疾患に加えてがんや希少疾患(血液製剤、ワクチンも含む)を重点事業分野に定め、世界のメガ製薬企業と伍していく覚悟を決めた。

 また、この買収のもうひとつの狙いは海外売上高の比率向上である。シャイアーは海外拠点が多く、この買収により武田の海外事業拠点は約80カ国・地域に及び、特に米国市場の売上比率は、シャイアーの60%を超える高比率が一助となって、将来的には5割を超える見通しである。製薬業に限らず、国内市場の縮小にどう対応するかはあらゆる業種に共通するが、武田はシャイアーを取り込むことによってトップラインの拡大を揺るぎないものにしようとしている。そのけん引役となるのが開発中の新薬候補の数(パイプライン)だろう。17年度中はその数が24製品だったのが、19年度(4~9月)は39製品へと増加、うち8製品はシャイアーの開発品である。

 19年度第3四半期累計の決算を見ると、買収効果は徐々に顕在化してきているのがわかる。トップライン(売上収益、財務ベース)では消化器系疾患、希少疾患、血液製剤、ニュー..


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