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[M&A戦略と法務]

2018年9月号 287号

(2018/08/15)

海外企業を対象とする買収取引と子会社管理における留意点

戸田 暁(TMI総合法律事務所 弁護士)
1.はじめに

 日本企業が海外企業を対象とする買収取引を行うことは、会社の成長と企業価値の向上のための重要な方策の1つとして認識されてきている。他方で、日本企業の海外子会社、とりわけ買収した海外子会社における不祥事等が発覚するケースも少なくない。もとより、海外企業の買収や海外子会社の管理に関する諸課題は、近時になって初めて生じたものではない。しかし、これらの諸課題の検討に直面する日本企業が増加し、また不祥事等が報道に登場するに伴って、一般投資家・社会の関心も高まっている。

 日本取引所自主規制法人は、2018年3月30日、「上場会社における不祥事予防のプリンシプル ~企業価値の毀損を防ぐために~」(以下「不祥事予防プリンシプル」という。)を公表した。そのプリンシプルの1つとして、「グループ全体に行きわたる実効的な経営管理を行う」ことが掲げられているが(不祥事予防プリンシプル原則5前段)、そのための管理体制の構築に関して、「特に海外子会社や買収子会社にはその特性に応じた実効性ある経営管理が求められる」と指摘されている(同原則後段)。

 以下では、特に買収した海外子会社における不祥事予防という観点から、買収時及び買収後における留意事項について、必ずしも網羅的なものではないが、若干の整理を行う。


2.海外企業を対象とする買収取引の意思決定に関する法的評価

 海外の買収子会社における不祥事を予防するためには、買収取引の意思決定プロセスにおいて、対象企業とその事業が具体的にどのようなリスクを抱えているか等の情報収集・調査と検討を行うとともに、こうした情報収集・調査・検討を踏まえて、買収後において、当該対象企業に対してグループ会社として具体的にどのような管理体制を構築し運用していくかについても、予め充分に検討しておく必要がある。不祥事予防プリンシプルの解説においても、「M&Aに当たっては、必要かつ十分な情報収集のうえ、事前に必要な管理体制を十分に検討しておくべきこと」が指摘されている(不祥事予防プリンシプル原則5の解説5-2)。

 もっとも、一般に国内M&Aにおいても、事前の情報収集・調査・検討には制約があり、買収後の管理体制に関する事前の検討にもなおさら限界がある。海外企業を対象とする場合には、法制・税制等の制度環境や文化等の相違があるだけでなく、対象企業とその事業に関する情報収集・調査自体が容易でないこともあり、国内M&Aに比して、難度が高いことが少なくない。また、海外企業について情報収集・調査自体が容易でないことがあるのであるから、買収後における管理体制を事前に検討することも、実際上、難度が甚だ高い事柄となりがちである。

 したがって、海外企業を対象とするM&Aに関して、「必要かつ十分な情報収集」を行い、事前に「必要な管理体制を十分に検討」するという、不祥事予防プリンシプルが企業に求める行動は、実務上相当程度に高度なものとなる。買収後に海外子会社において不祥事等が発覚した場合には、株主・投資者らから、そもそも買収に先立って、不祥事予防プリンシプルに沿った情報収集や管理体制の検討が充分になされていたのかが問われる結果になり得るという点に、留意する必要がある。

 他方で、

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