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[M&A戦略と法務]

2019年1月号 291号

(2018/12/17)

マレーシアにおける公開情報に限定した法務デューディリジェンスの実務

三澤 充(TMI総合法律事務所、現在マレーシア・クアラルンプールのChooi & Company + Cheang & Ariff法律事務所に出向中)
1. はじめに

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の構成国であるマレーシアは、インフラや教育など、国の基礎的な整備がなされ、1人当たりGDPがすでに10000米ドル程度に達しており(注1)、ASEANにおいてはシンガポールに次いで1人当たりGDPが高い国となっている。

 こうした事情を背景に世界各国からの継続的な直接投資を受けており、その額も増加を続けている。日本からの投資もこれまで多くなされており、日本に対して理解が深く、前回の首相就任時に「ルックイースト政策」を掲げてマレーシアの経済成長を推し進めたマハティール・ビン・モハマド氏が2018年5月に政権を獲得し、再度首相に就任したことから、今後も日本からマレーシアへの投資は継続的に拡大していく可能性が高い。

(注2 2001年から17年までのマレーシアに対する直接投資額の推移)


 マレーシアは、隣国がシンガポールということもあり、東南アジア経済のハブともいえるシンガポールに統括拠点を置く企業がマレーシアに子会社・関連会社を有していることが多く、こうしたシンガポール企業がM&Aの対象会社となる場合、その子会社・関連会社であるマレーシア企業も合わせてM&Aの対象となる場合が多い。

 一方、ASEAN企業を対象会社とするM&Aについては、必ずしも多くの企業がM&Aに予算を潤沢に用意しているとはいえず、M&Aにおける各プロセスにおける費用についても可能な限り抑えながら進めざるを得ないと考えている企業が多い。

 このような事情から、マレーシア企業に対するM&Aプロセスにおいても可能な限り費用を抑えたいという意向を有する企業も少なからずあり、例えば買収側がすでに対象会社の内部事情等を十分に認識しており、M&Aを実行することについて大きな問題がないと判断している場合にはこうした意向は特に強く働くことになる。

 本稿では、こうしたM&Aを実施する企業の実情を踏まえ、非上場企業を念頭に、マレーシア企業の公開情報に限定した法務デューディリジェンスを行う際のポイントや留意点を説明する。


2. M&Aの初期的検討段階における公開情報の入手

 マレーシア企業に関する公開情報は、マレーシア企業を対象とするM&Aを実施する段階のみならず、そもそもある企業がM&Aの対象企業となりうるか、デューディリジェンスを実施するべきか否かを検討する初期的な段階でも有用である。

 大規模な企業信用調査会社が存在する日本のような状況とは異なり、マレーシアには大規模な企業信用調査会社が存在しない。このため、M&Aの対象となりうる可能性のあるマレーシア企業を発見することができたとしても、当該企業に対してM&Aを実施すべきか否かを判断するための情報が不足する場合が多い。

 マレーシア企業の公開情報の入手は、企業信用調査会社に依頼する場合に比べ、得られる情報が限定的ではあるものの、M&Aを進めるべきか否かを検討する段階ではその足がかりになるともいえ、M&Aの対象会社となりうるか否かの初期的な検討段階においても、マレーシア企業に関する公開情報は有用である。


3. 各情報の入手方法と留意点

 以下、具体的に公開されている各情報の入手方法及び留意点について説明する。

(1) 会社組織・許認可に関する情報

(ア) マレーシア会社登記所の登録情報

 会社組織に関する公開情報源として最も有用なものはマレーシア会社登記所(The Companies Commission of Malaysia(注3)、以下「CCM」という)の情報である。

 CCMの登録情報では、会社によって取得可能な情報の範囲が異なるものの、基本的には会社組織・許認可等に関する情報として以下の情報を得ることが可能である。
• 旧・現会社名(会社名の変更がある場合には変更日)
• 会社登録番号
• 会社設立日
• 法人の種類
• 法人の存続状態(清算していないか否か)
• 登録上及び事業上の会社所在地
• 事業の種類
• 発行済株式総数・総額
現金出資額・現物出資額が区別されて表示される
種類株を発行している会社であれば普通株式と区別されて表示される
• 取締役及び秘書役の情報

 会社登記所登録情報は

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