[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2018年6月号 284号

(2018/05/17)

第158回 総合商社業界 非資源分野への投資、財務体質改善に戦略転換

~資源価格下落による業績悪化を契機に

編集部
  • A,B,EXコース
18年3月期に4社は過去最高益を見込む

 総合商社大手5社の2017年3月期連結決算(下表)では、16年3月期に赤字転落した三菱商事、三井物産が両社ともV字回復し、三菱商事の最終利益は4402億円となって、トップの座を譲った伊藤忠(3522億円)を上回り、業界首位を奪い返して注目された。なお、三菱商事に抜かれたものの伊藤忠商事の17年3月期最終利益も過去最高益を記録するなど好調を維持した。

 18年3月期の純利益予想については、三菱商事が5400億円、三井物産が4400億円、伊藤忠商事は4330億円、住友商事3000億円、丸紅2000億円としており、丸紅は最高益(14年3月期2109億円)には及ばないが、上位4社はそれぞれ過去最高益を見込むなど業績の好調は続く。


資源ブーム終焉後、戦略の転換へ動く

 「三菱商事の16年3月期の最終利益は1494億円の赤字、三井物産も834億円の赤字となった一方で、伊藤忠商事の最終利益は18.4%減ながら2404億円を計上して首位に躍り出るというランキングの変動をもたらした主因は、石油や鉄鉱石などの資源価格の急落です。総合商社は、近年、トレードを主体としたビジネスから資源の権益を買うという事業投資型のビジネスモデルに転換してきました。ところが、ここへきて中国の経済成長の鈍化などによって、資源価格が大きく下落したことが商社の決算を直撃して減損が大きく膨らむことになったのです。

 そうした中で、伊藤商事は10年4月に社長に就任した岡藤正広氏が『非資源商社ナンバーワン』を掲げ、生活産業や機械などの非資源分野に力を入れるという戦略が奏功して好決算を実現しました。こうしたことから、各社ともボラティリティの高い資源投資を見直すという戦略転換を図っています。ポイントは、得意な分野に投資するのが成功のカギということです。我々はケイパビリティに基づく戦略構築(ケイパビリティ・ドリブン・ストラテジー)と呼んでいますが、これからの競争を勝ち抜くためには他社の物まねではなく自分が得意とする分野を見極めて投資することが重要だと考えています」と、PwCコンサルティング合同会社、Strategy&の坂野俊哉・パートナーは指摘する。

 この資源ブーム終焉後の総合商社の戦略転換について、ムーディーズ・ジャパンの桑原雅子コーポレート・ファイナンス・グループ ヴァイスプレジデント・シニア アナリストはこう解説する。

「資源価格が高水準で推移していた2011~14年に総合商社は、

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