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[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2018年8月号 286号

(2018/07/17)

第160回 医薬品業界~グローバルM&A進展の中で買収合意に至った武田薬品工業とシャイアー(上)

澤田 英之(レコフ 企画管理部 リサーチ担当)
1.日本企業として最大規模のM&Aを発表した武田薬品工業

 2018年5月8日、武田薬品工業(以下「武田」)はアイルランド製薬会社のシャイアーの完全子会社化について両社が合意したと発表した。買収金額は7兆円であり、これが実現すれば日本企業によるM&Aとしては過去最大規模になる。また、世界の大手医薬品メーカーによるM&Aの中でも、サノフィ・サンテラボ(仏)によるアベンティス(仏)の買収(2004年、7兆6000億円)や、ファイザー(米)によるファルマシア(米)の買収(2003年、7兆5000億円)に匹敵するトップレベルの水準である。

 今回、武田が最初に提案したのは3月29日であった。以後、シャイアーは自社の企業価値の過小評価を理由に4回に亘って提案を拒否してきたが5回目の提案で合意に至り、買収金額は当初から1割増加した。この間、アイルランド製薬大手のアラガンが対抗提案の検討を発表したが数時間後に取り下げている。取り下げた理由は発表とともにアラガンの株価が急落し、株主からの理解が得られないと判断したためとみられている。

 武田による買収の対価は現金と株式であり、現金についてはその一部となる3兆3600億円(308.5億米ドル)を借入により調達する。当初、武田はそのすべてをJPモルガン・チェース銀行(米国)、三井住友銀行、三菱UFJ銀行とのブリッジローン契約により調達し、その後、社債発行や長期融資への借り換えなどにより返済する意向を示していた。しかし、このうち8200億円(75億米ドル)については、JPモルガン・チェース銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行とのタームローンクレジット契約(最終返済日は借入実行日から5年後)による調達に変更。これについて武田は、自社の戦略に対する「グローバル金融機関からの強い支持の現れ」と述べている。

 また、株式を対価の一部とするため完了後の武田の株式は、現在の武田の株主とシャイアーの株主が50%ずつ保有することになる見込みだ。

 両社は2019年6月までに買収を完了させる意向だ。現在、武田、シャイアーとも世界で売上高20位レベルにランクされているが、買収が完了すれば売上高は単純合算で3兆4000億円となり、世界で業界売上高10位以内にランクされる医薬品会社が誕生することになる。

 本稿では武田によるシャイアーの買収について2回に分け、前半(上)では最近の世界の医薬品業界におけるM&A動向とシャイアーの概要、そして後半(下、2018年9月号掲載予定)では武田によるシャイアー買収の背景などについて述べてみたい。なお、文中の金額・比率等は概算値である。


2.世界の医薬品業界におけるM&A動向

 1990年代後半、国内外の大手医薬品メーカーが開発した高脂血症や高血圧症、潰瘍などの生活習慣病向け医薬品は長期に亘り多数の患者に投薬される傾向もあって、いわゆる「ブロックバスター(大型医薬品)」に成長した。ところが2000年前後から新薬開発の難度が高まり、これとともに医薬品会社で必要とされる研究開発費が増加した。医薬品の開発は、主に低分子化合物を組成して細胞との化学反応の状況等をスクリーニングするといった手法が取られてきたが、開発が進展するとともに新たな医薬品シーズの発見が難しくなったのである。

 特に後発医薬品が普及している欧米の新薬メーカーにとっては特許切れの影響が日本に比べて大きく、強い危機感を抱いた海外主要医薬品会社は研究開発費の確保などに向けて経営統合を進め、規模を拡大させてきた(図表1)。前述したファイザー(米)によるファルマシア(米)の買収(2003年)、サノフィ・サンテラボ(仏)によるアベンティス(仏)の買収(2004年)もこれに含まれる。

 実際に日本製薬工業協会DATA BOOK 2018によってその後のデータをみると、

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