[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2013年9月号 227号

(2013/08/15)

テンポスバスターズ創業者・森下篤史氏が語る成長哲学――「経営に成功法則はない。ヘトヘトになるまでやった先に次のステップが見えてくる」

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社長の椅子を争奪戦で決める

森下篤史氏   ジャスダック市場に上場している企業にはユニークな経営で知られるところが少なくない。テンポスバスターズもその一社だ。

  1997年中古厨房機器のリサイクル事業を立ち上げて急成長、5年後の2002年12月には早くもジャスダック市場への上場を果たした。現在は中古厨房機器のリサイクル事業を核に飲食店の開業支援などを行うフードビジネスプロデューサー(以下:FBP)事業、さらに飲食店経営を行う飲食事業へと業容を拡大。グループは、連結子会社6社(テンポスファイナンス、テンポスドットコム、テンポス情報館、あさくま、テンポス店舗企画、スタジオテンポス)、非連結子会社2社(MFOOD、トータルテンポス)、持ち分法適用会社1社(オフィスバスターズ)などで構成されている。

   13年4月期の連結売上高は162億200万円(前事業年度比11.7%増)、営業利益12億7000万円(同13.5%増)、当期純利益は7億5000万円(同10.0%増)。14年4月期予想は売上高180億円(対前年比11.1%増)営業利益16億円(同25.9%増)、経常利益17億円(同24.5%増)、当期利益9億5000万円(同26.6%増)という高収益企業である。

    テンポスバスターズのユニークな点はその人事制度だ。この7月20日付で同社の社長が交代したが、社長は4年ごとに行われる「社長の椅子争奪戦」で決められる。今回、社長の椅子を勝ち取ったのは平野忍氏。05年テンポスバスターズに入社。11年西日本・東海エリアマネージャーとなった42歳。

    上場企業としては例のない社長の椅子争奪戦の言い出しっぺは、ほかならぬ創業者である森下篤史氏だ。

   「組織を新陳代謝させるには競争させるのが一番いい。だからテンポスバスターズの店長も立候補制で、店長を決めるのはマネージャー陣です。しかし、社長はいつまでたっても社長だからいいなということになるでしょう。じゃあ社長も争奪戦やろうなんてつい軽口叩いた結果こうなっちゃった」と森下氏。1947年2月生まれ。静岡大学時代は空手部に所属したというだけあって、小柄ながら精悍な体つきで、日焼けした顔をほころばせる。

   第1回の社長の椅子争奪戦は03年9月1日から半年にわたって行われた。この時に手を挙げたのは森下氏の他、エリアマネージャー7人の合計8人だった。立候補者は粗利益率の向上、新規客の獲得数、中古厨房機器の調達量などのほか、「断固やる」「人が好き」「逃げない」などリーダーとしての資質を多方面から評価され審査される。この1回目の勝者は森下氏だったが、07年の第2回争奪戦では「既存の厨房機器販売事業はノウハウも体制も整ったので私でなくても運営できる。私はグループ戦略に専念する」と、退陣を表明。08年5月代表取締役には実弟で、当時取締役管理部長だった森下和光氏が就任した。

   現在の森下篤史氏の肩書は「テンポスグループ取締役グループ長」。「グループ長なんて言っても外の人にはわからないだろうから、名刺は会長にしてある」と、森下氏。

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