[ニューノーマル時代の日本企業M&Aの指針]

2021年11月号 325号

(2021/10/11)

第11回 グローバルHRプラットフォーム

服部 洋平(マーサー ジャパン M&Aアドバイザリーサービス部門 マネージャー)
  • A,B,C,EXコース
HRプラットフォームとは

 HRプラットフォームという言葉に読者の皆様はあまり馴染みはないかもしれない。プラットフォームとは狭義には、ITシステムやアプリケーションの動作環境を指すことが一般的であるが、ここでは人事の実務や各種施策を実行していくうえで土台となる仕組み(人事制度)やツール(HRIS<人事管理システム>)を示すものとしてHRプラットフォームという言葉を用いている。図1に主要なHRプラットフォームを示している。

図1)HRプラットフォーム

 近年、効率性・コスト低減の観点からM&A時にこれらのHRプラットフォームのうち、HRISをはじめとするシステムの統合、あるいはPayrollなどのオペレーションの統合に焦点を当てた事例が多くみられ、一定の効果が得られているように見受けられる。一方で、HRに本来求められる役割である “優秀な人材あるいは重要な人材を把握し、適切に評価し処遇することを通じて業績の向上に貢献する”あるいは“被買収会社を適切にコントロールし、業績の向上へ向けた変革を推進する”といった観点では、被買収会社の基幹人事制度である等級・評価・報酬の仕組みに踏み込んでいく必要がある。

 具体的には、いくらHRシステムにより情報が一元管理できるようになり、被買収会社の人事情報(等級情報や評価情報)にアクセスできるようになったとしても本社サイドからそれらの意味しているものが理解できない、あるいは本社の考え方と異なる基準で設定されたものとだとすると、それらの情報から何か有益な示唆を得ることは難しいであろう。さらに悪いことに、被買収会社の評価の仕組みが形骸化しており適正な評価が実施できていない場合には、本社がいかに効果的な戦略・戦術を立案したとしても被買収会社の経営幹部をはじめ従業員がその戦略・戦術を実行するインセンティブが適切に機能せず、戦略・戦術が実行されず買収前に思い描いていたシナリオとは異なる結果に終わってしまう。また、組織設計(ポジションの設置)に関する基準がないために被買収会社において人件費単価の高い上位のポジションが乱立され、気がついたら人件費効率の悪い組織となっていたということもあり得る。

 したがって、M&AあるいはPMIの局面において、

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